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ネクタイの結び方に慣れる期間
スーツを着て社会人を経験すると、通常は3-4か月ほどもすればネクタイの結び方には慣れるものです。
「3-4か月?そんなにかかるわけないじゃん!毎日ネクタイ結んでれば、1か月しないうちに慣れるよ。」と答えるのは、ネクタイの結び方が毎日同じ人でしょう。
実は、ネクタイの結び方(ノットの作り方)は、80種類以上あると言われています。
それらの中から基本的な結び方(プレーンノット、ウィンザーノットなど)を数種類、特別な結び方(トリニティノット、メロビンジアンノットなど)を1-2種類知っておくととても重宝します。
とは言え、これらの結び方を一生懸命覚える必要はなく、普段ネクタイを結ぶ中で自然に慣れれば良いのですが、それまでの期間が3-4か月という意味です。
ただ、せっかくかっこいいネクタイの結び方を覚えても、「ディンプル」がないとVゾーンが寂しく見えます。
今回は、意外と知らない人も多いネクタイのディンプルの意味、ほどけないきれいなディンプルの作り方についてお話します。
ネクタイのディンプルとは
ネクタイのディンプル(dimple)とは、ネクタイを結んで作ったノットの下にできる”縦筋のくぼみ”のことです。
くぼみができるということは、ネクタイが立体的になり、陰影ができるということ。とくにシルクのネクタイに陰影ができると、立体感と光沢が強調されて、シルクの質感がわかりやすくなるため、のっぺりとした印象から自然な艶っぽい印象に変わります。
スーツスタイルでは、如何にVゾーンを美しく華やかに飾るかが重要です。たとえシンプルなビジネススーツでも、ディンプルでネクタイを強調し、Vゾーンを華やかに目立たせることで顔の印象も変わります。
また、ディンプルを作ることでネクタイが引っかかりやすくなるため、短時間でほどけてしまうことを防ぐ効果もあります。
ちょっとしたことですが、ディンプルはスーツスタイルでもっとも大切なVゾーンを飾り、ネクタイを維持する基本テクニックとしてとても重要です。
ディンプルの種類
ディンプルの種類は大きくわけて3種類、ただしノットによってディンプルの大きさも変えてアレンジができます。
- センターディンプル
- ダブルディンプル
- アシンメトリーディンプル
1.センターディンプル
センターディンプルとは、ネクタイの中心に作られたディンプルのことです。もっともオーソドックスで、マジメな印象に仕上がります。
2.ダブルディンプル
ダブルディンプルとは、くぼみが2つ作られたディンプルのことです。三つ折りディンプルとも言います。ダブルディンプルは、とくに太いネクタイに効果的で、Vゾーンに柔らかさとインパクトを加えてくれます。
3.アシンメトリーディンプル
アシンメトリーディンプルとは、ネクタイの中心から左右どちらかに寄った位置に作るディンプルのことです。
センターディンプルをずらしたり、ネクタイの折返しで端にディンプルを作りますが、どちらもネクタイを目立たせ、外しでVゾーンにこなれ感を持たせる場合に用います。
ただアシンメトリーディンプルは、普段から着こなしに気をつけている印象を与えておかないと「あれ?ネクタイずれてるよ。」と言われることも……。やり慣れていない人は、小剣ずらし※などの合わせ技が良いかもしれません。
※小剣をずらして、大剣からチラ見えさせるネクタイの結び方。
崩れないディンプルを作る方法
ネクタイをしたサラリーマンが、鏡の前でネクタイに指を突っ込んでノットの調整をしている姿を見たことはないでしょうか。その多くは、崩れたディンプルを直している姿です。
ネクタイは時間が経つと緩み、同時にディンプルも崩れるため、いつの間にか凹凸がなくなっています。何度もディンプルを直すのは面倒なので、ディンプルを長持ちさせる方法、ディンプルを作りやすいネクタイを知っておきましょう。
ディンプルを作りやすいネクタイ
昔とは違い現在の一般的なシルクのネクタイには、シルエットを保つ「芯地」が入っています。そのため、ディンプルを作ること自体は難しくありません。その他、厚み、幅、ハリがあるネクタイもディンプルを作りやすいですね。
芯地が入っていなくてもボリュームがあるセッテピエゲ、幅があって引っかかりの良いニットタイもディンプルは作りやすいでしょう。芯地がないネクタイは、ディンプルによって柔らかさが強調されます。
セッテピエゲ(sette pieghe)とはネクタイの縫製方法のことで、イタリア語でsette(7つの)pieghe(折り目)という名前の通り、通常のネクタイよりも薄手のシルク生地を7つ折りにしてネクタイに仕立てたものです。
一方、ボリュームがない(薄い)ネクタイ、幅が狭いネクタイはディンプルが作りにくくなります。
ディンプルの作り方
ディンプルはネクタイを通して、最後にノットをつくる際に指で調整をしながら作っていくものです。そのため、初めはなるべく丁寧に作って慣れるようにしましょう。
センターディンプルにしろ、ダブルディンプルにしろ、以下の2つのポイントを守ることで崩れにくいディンプルを作れます。
- ディンプルはノットの最上部を起点とする
- ノットの最下部をしっかり締める
ネクタイを結ぶ際は、長さを調整しながらノットの形を整えていきますが、ディンプルはこの時点で作り始めます。つまり、ディンプルはノットの下に作るのではなく、ノットの中(ノットの上)から作り始めた方が崩れにくくなります。
また、ディンプルの形を保ったままネクタイを締めていき、最後にノットの最下部をしっかり締めます。これは、ネクタイの凹凸をギュッとロックするイメージです。
言葉で説明すると、右利きの人の場合、左手の親指と中指でノットを挟み、人差し指をノットの中に入れてくぼみを意識しながら、右手でネクタイを少しずつ引っ張って調整していく(人によってやりやすい手・指は異なる)、といったところです。
もちろん、手持ちのネクタイだと短時間でディンプルが崩れるということもあるでしょう。「どうしてもこのネクタイを使いたいんだ!」という人のために、ディンプルクリップ(dimpleclip)という秘密兵器もあります(思わずポチってしまいました……)。
ディンプルのマナーとTPO
さて、ネクタイを結ぶ際の基本であるディンプルですが、ディンプルを作ること自体はマナーではありません。
そのため、必ずしもディンプルを作らなければいけないわけではありません(せっかくのVゾーンが野暮ったくはなりますが)。
一方、ディンプルは華やかさを加えるテクニックのため、作らない方が良い場面もあります。それは、お通夜や葬儀、または謝罪の用など、華やかさを求めることが失礼にあたるシーンです。
場合によってうっかりディンプルを作ってしまわないよう、TPOを押さえておきましょう。
なお「きれいなノットを作りつつ、深いディンプルを作り、さらにネクタイの大剣をベルトにかかる長さに調節する」と聞くと、ネクタイ初心者には難しく聞こえるかもしれませんが、毎日意識して結んでいればすぐにできるようになるので、心配しないでください。
最後に、ジャケットのラペル幅とネクタイの大剣幅を合わせるとバランスが良くなります。一時期の極端なナローラペルブームは去り、現在のラペル幅は8-9cmをよく見ます。
大剣の幅もそれくらいがちょうど良いため、現在のネクタイは少し前のネクタイに比べてディンプルを作りやすいと言えますね。