ネクタイのトレンド
ここ数年ほど、「セッテピエゲ」という種類のネクタイの人気が高まっていることを知っているでしょうか。「えー、いまさら?」と言う人もいるかもしれませんが……。
というのも、イタリアのネクタイブランドを中心に人気が高まり、日本でセッテピエゲが広まりだした時期は今から10年近くも前。それから、様々なブランドだけでなく、セレクトショップ、スーツ専門店までが、セッテピエゲのネクタイを並べるようになりました。
今では、ネクタイの新作が発表されると、そのうち何本かはセッテピエゲのネクタイだったりします。
とは言え、セッテピエゲを知っていて当たり前なのはスーツ好きな人ばかりで、まだ一般的に広がっているわけではありません。
とにかく、「ジャケットは本切羽だよね。」という右へならえの状態に至るには、時間がかかるでしょう。そうだとすれば、今のうちにセッテピエゲの魅力を知って、早めに一本持っておいても損はしないと思います。
参考|本切羽と開き見せの違いは?スーツの袖ボタンは本切羽が良い?
今回は、セッテピエゲと普通のネクタイの違いやセッテピエゲの魅力についてお話したいと思います。
セッテピエゲとは
セッテピエゲ(sette pieghe)とは、ネクタイの縫製方法のことで、イタリア語でsette(7つの)pieghe(折り目)という名前の通り、通常のネクタイよりも薄手のシルク生地を7つ折りにしてネクタイに仕立てたものです。
ちなみに、英語だとセブンフォールド(seven fold)と言います。
出典|TIE YOUR TIE(タイユアタイ)タイユアタイ / ストライプ タイ(セッテピエゲ)/シルク・コットン/T94004/03 | B.R.ONLINE
一般的なネクタイは、シルク生地を3つ折りにしたトレピエゲ(tre pieghe)という仕立てでできており、中には剣形の芯地が入っています。
現在のネクタイは、この芯地のおかげで型崩れしにくく、結びやすいうえに、結んだ後もきれいな形に仕上がります。ネクタイの芯地はわたしたちでも購入することが可能です。
一方、セッテピエゲは芯地を使わない昔ながらの縫製方法に近いため、スタイルで言えばクラシックなネクタイです。ちなみに、ネクタイの起源は17世紀のフランスで、兵士がスカーフを何重にも折って首に巻いていたものです。
セッテピエゲの魅力と注意点
なぜ今、セッテピエゲの人気が高まっているのでしょうか。セッテピエゲの魅力と注意点を押さえておきましょう。
セッテピエゲのメリット
セッテピエゲの1番の魅力は、ネクタイを結んだときの自然なボリューム感、そして丸みを帯びた柔らかな風合いが首元にプラスされることです。
スーツスタイルの表情はVゾーンで表現されますが、その表情を決めるもっとも大きな要素はネクタイの色と質感です。
ネクタイにセッテピエゲを使うことで、Vゾーンのボリュームが増して男性的な立体感が強調されますが、単純に男性的な力強さを出すだけではなく、芯地がないことによる丸い柔らかさが出るため、大人の色気や包容力を感じさせます。
ネクタイのディテールで男性的な力強さと大人っぽい色気を出し、後はネクタイの色によってさらに良い印象を加えるわけです。
ネクタイの色の影響はまた別途お話しますが、簡単に言うとネイビーは冷静さと聡明さ、赤色は華やかさと力強い意思、青色は信頼感と爽やかさ、黄色は明るさと知性、ピンクは優しさと色気を表すなどです。
セッテピエゲのデメリット
一方、セッテピエゲにはいくつかの注意点もあります。
まず値段が高いこと。セッテピエゲは通常3つ折り分の生地を倍以上の7つ折りの生地で形作っています。そのため、単純に1.5-2倍近い料金設定がされています。
また、セッテピエゲは芯地が入っていないため、慣れるまでは現在のネクタイよりも少し結び難さを感じるかもしれません。
同じく芯地が入っていないため、シワや型崩れを起こしやすい特徴もあります。とくに、ネクタイのメジャーな収納方法に”丸めて収納”がありますが、セッテピエゲは丸めると型崩れの原因になります。
このようにセッテピエゲはデリケートなネクタイのため、クリーニング料金も高くなる場合があります。というよりも、通常のクリーニングよりも丁寧に仕上げてもらった方が良いでしょう。
セッテピエゲを買うためには
前述した通り、セッテピエゲは日本のセレクトショップやスーツ専門店でも購入できます。
ただし、一言でセッテピエゲと言っても、作りや仕上がりなどはブランド・メーカーによって様々です。名前の通り7つ折りで芯地なし、ハンドメイドが正式なセッテピエゲなのですが、ハンドメイドであれば芯地が入っていてもセッテピエゲとする類似品もあるようです。
そんな中で間違いがないセッテピエゲは、1984年にイタリアのフィレンツェで生まれたタイユアタイ(TIE YOUR TIE)というセレクトショップが取り扱うもの。タイユアタイは、セッテピエゲの代名詞と言っても過言ではありません。
タイユアタイは比較的歴史が浅いイタリアブランドですが、創業者は同名のネクタイブランドが有名なFranco Minucci(フランコ・ミヌッチ)氏です。
上質なセッテピエゲを購入するなら他にも、マリネッラ・ナポリ(E.Marinella Napoli)、アットヴァンヌッチ(AttoVannucci)、フランコ・バッシ (FRANCO BASSI)、ステファノ・ビジ(STEFANO BIGI)などのネクタイブランドだけでなく、バルバ(BARBA)、キートン(Kiton)、ルイジボレッリ(LUIGI BORRELLI)、チェザーレ・アットリーニ(Cesare Attolini)などのシャツ・スーツブランドが作るセッテピエゲも有名です。
もちろん、日本のセッテピエゲは品質が良いものも多いので、わざわざ上記の高級な海外ブランド(というか全部イタリアブランド)のセッテピエゲを求める必要はありません。
気持ちと懐に余裕があれば、一段上質なネクタイを楽しむという自己満足のために挑戦すれば良いでしょう。
ちなみに、ネクタイの折り数は3つ折り、7つ折りだけでなく、4つ折りのクワトロピエゲ(quattro pieghe)、10折りのディエチピエゲ(dieci pieghe)、12折りのドディチピエゲ(dodici pieghe)などなど様々あります。
それぞれVゾーンを彩る表情が変わるため、それらのネクタイをすることで、今まで感じたことがないネクタイの魅力に気付くことができるかもしれません。