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May.22

春夏スーツ・秋冬スーツ・オールシーズンスーツの違いと見分け方

Written by伊藤進一郎

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

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スーツにも春夏秋冬の季節がある

カジュアルな服に春夏モノ・秋冬モノがあるように、スーツにも春夏スーツ・秋冬スーツという季節の違いがあることは知っていますよね。

カジュアルな服には様々なシルエットのアイテムがあり、色味や素材で季節感を出しやすいため、厳密に言えばそれぞれの季節を象徴する着こなしがあります。たとえば、色味では春色は爽やかな寒色、秋は柔らかな暖色を使うと季節を意識したコーデを作れます。

一方、スーツ単体で見ると春夏秋冬すべての季節を意識する必要はなく、日本においては春夏と秋冬で2パターンのスーツを使い分けることが一般的です(もちろんシャツやネクタイなどで季節感は出しますが)。

また、馴染みがない人もいるかもしれませんが、「オールシーズンスーツ」という1年間の着用を目的としたスーツもあります。

では、わたしたちがスーツを買う際に注意すべき春夏スーツ、秋冬スーツ、オールシーズンスーツの見分け方・選び方はあるのでしょうか。

今回は、春夏スーツ・秋冬スーツ・オールシーズンスーツの違いについてお話します。

春夏スーツと秋冬スーツの違い

春夏スーツと秋冬スーツの違いは、裏地、生地、重さ、色味の4つです。

スーツの季節の違い1.裏地の有無

春夏スーツと秋冬スーツの見分け方でもっともわかりやすいディテールは、ジャケットの裏地の有無です。

通常、ジャケットには背中に裏地が付いており、裏地による保温性・保湿性があるスーツを秋冬スーツとしています。これを「総裏(そううら)」と言います。反対に、裏地が付いておらず風通しが良いスーツを春夏スーツとし、これを「背抜き(せぬき)」と言います。

参考|背抜き・総裏とは?スーツに裏地があるメリット・デメリット

夏の暑い日はジャケットを脱ぎたくなりますが、慣習として残るマナーではフォーマルな場でジャケットを脱ぐことは失礼にあたり、セミフォーマルな場でジャケットを脱ぐ際は「失礼します。」の一言が必要とされています。

これをビジネスシーンに適用して、「人前でジャケットを脱ぐことは失礼だ。」と考える会社もあります(少なくなってはいますが)。つまり、常にジャケットを着用すると考えるなら、裏地の有無による寒暖の調整は重要だということです。

スーツの季節の違い2.生地の種類と質感

春夏スーツと秋冬スーツは生地の種類にも違いがあります。

春夏スーツにはリネン、コットン、モヘア、シアサッカーなどの薄くサラッとした生地を使います。一方秋冬スーツには、ツイードやフランネル、ベロアなどの毛足が長い生地を使います。

ただし、スーツは特徴的な生地を使うとカジュアルな雰囲気が出て、ビジネスシーンにそぐわないことがあります。

そのため、季節を問わない素材として毛足の長さ、質感に違いがあるウールよって春夏、秋冬を分けます。

一般的には、春夏スーツには細くて毛羽の少ない梳毛(そもう)を使うことで滑らかな仕上がり、秋冬スーツには太くて毛羽立った紡毛(ぼうもう)を使うことで暖かな仕上がりになります。

スーツの季節の違い3.目付け(重さ)

基本的に春夏スーツは、風を通しを考えて薄手で織りの密度が粗い生地を使うため、全体の重量が軽くなります。一方秋冬スーツは、風を通さないよう厚手で織りの密度が細かい生地を使うため、全体の重量が重くなります。

1平方メートル当たりの生地の重さを「目付(めつけ/GMS)」と言い、目付量は「g/㎡」や「gms」などの単位で表します。目付量は素材によって違うためあくまでも目安ですが、国内の一般的な春夏スーツは200-300(gms)、秋冬スーツは300-400(gms)ほどでしょうか。

ちなみに、良いスーツの条件の1つに柔らかなドレープ感が挙げられますが、柔らかさは細くしなやかな繊維を編み込んだ糸で実現します。そのため、目付量が重い割に細い繊維を使っているスーツは質の良いスーツだと言えます(繊維が細い=必ず高級ではない)。

ただし、最近は秋冬でも機能的な軽量スーツがあるため、単純な重さだけでは判断が難しい場合があります。

スーツの季節の違い4.色味

最後に、春夏スーツと秋冬スーツを色味で区別したい場合は、素材に付随した色味で判断します。

カジュアルファッションと同様で、寒色を使うと爽やかで涼しげな印象、暖色を使うと柔らかく暖かい印象になります。春夏スーツはリネンやコットンを使ったベージュ、シアサッカーを使った薄いブルーなど、秋冬スーツはツイードを使った濃いブラウンなどが象徴的な色です。

ただし、ビジネススーツの基本はダークネイビーとダークグレーのため、スーツの色味のみで季節感を出すことを意識しすぎると(素材も含めて)カジュアル感が強くなり、コーディネートが難しくなります。

別途お話しますが、ビジネススーツの色味は基本的にダークカラーなので、色味はネクタイやシャツで違いを作り、全体で季節を感じられるようにコーディネートします。

参考|ビジネススーツを着こなしたい!絶対失敗しない王道の色使いとは

オールシーズンスーツとは

オールシーズンスーツとは、1年通して着用することを考えて作られたスーツのことです。春夏秋冬に対応できるように、裏地の有無や生地の質が選ばれて作られます。

たとえば、ジャケットを背抜きにすることで暑い日でも着心地を良くし、一方で目付が重い生地を使うなど複合的な要素を持っています。

オールシーズンスーツは、スーツ量販店であればどこでも取り扱っていますが、オールシーズンに明確な定義はありません。各社が季節に応じて着られるように工夫したスーツが、オールシーズンスーツと認識すれば良いでしょう。

参考|スーツ量販店のAOKI・青山・コナカ・はるやまの違いと比較

ここで、「オールシーズンスーツがあれば、春夏・秋冬スーツを季節で分ける必要ないんじゃない?」と思う人もいるかもしれません。ただ残念ながら、オールシーズンスーツは真夏は春夏スーツよりも暑さを感じ、真冬には秋冬スーツよりも寒さを感じるデメリットがあります。

そのため、1年中あまり寒暖の差がない内勤作業をする人に向いたスーツです。常時スーツ着用で内勤作業がメインの人は、1度スーツ量販店に出向いて、袖を通してみると良いでしょう。

スーツで季節感を出す重要性

スーツの裏地・生地・重さ・色味による季節の感じ方は、「裏地=生地=重さ>色味」ではないかと思います。もちろん、パッと見でわからない生地もありますし、トータルの感じ方もあるため一概には言えませんが、意識するポイントにはなります。

「暑い寒いは自分の感覚次第だし、別にどのスーツでも良くない?」

たしかに、規則が厳しい会社は夏もジャケット着用のため、どちらにしても暑いことに変わりありません。冬もジャケットの中にベストを着たり、コートを羽織ったりするため、スーツ単体での季節感をあまり気にしない人もいるでしょう。

ただ、服装で感じる季節感は着ている人だけでなく、それを見る人にも影響を与えます。

夏に毛足の長いツイード生地のジャケットを着た人を見ると暑そうに感じますし、冬に薄手のコットンジャケットを着た人を見ると寒そうに感じます。生地素材だけではなく、全体の色味やちらっと見える裏地で季節感にそぐわない印象を受けることもあります。

このような季節にそぐわない印象は人に不快感を感じさせるだけでなく、「着こなしがわかっていない人=おしゃれじゃない人」というイメージも持たれてしまいます。

スーツを着こなすためには、見た目の雰囲気も合わせた機能的な着こなしが必要です。

春夏スーツと秋冬スーツの裏地・生地・重さ・色味の違いを知り、季節に合わせて着分けるだけで着こなしのイメージが変わります。スーツスタイルで季節感を出すことの重要性を知っておきましょう。

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