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Jun.05

シングルとダブルの違いは?スーツの格式や年齢、体型など注意点

Written by伊藤進一郎

この記事を読むのに必要な時間は約 13 分です。

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ダブルブレストが増えてきた

最近、ビジネスマンのダブルブレスト(ダブルスーツ)に対するイメージが変わってきました。

以前は、ほぼシングルブレスト(シングルスーツ)しか飾っていなかったスーツ専門店も、今行くとダブルブレストの割合が多くなり、ボディやトルソーに飾られた目立つディスプレイを多く見かけます。

とくに若い層においては、ここ30年近くシングルブレスト一択だったスーツ選びにダブルブレストが増えたことは、着こなしの幅が広がった嬉しい傾向だと思います。

このような傾向は、これまで”マナー”なのか”独特の慣習”なのかが曖昧だったダブルブレストの着用イメージさえも変えてしまうかもしれません。

ところで、ダブルブレストが増えてきた流れをスリーピーススーツが増えていることと同様に、「英国調の復活」と位置付ける意見がありますが、それは本当のことなのでしょうか。

参考|スリーピーススーツの着こなしとマナーは?ツーピースとの違いは

今回は、ダブルブレステッドスーツ(ダブルブレスト)とシングルブレステッドスーツ(シングルブレスト)の違いや由来、また2つのスーツを使い分ける必要性などについてお話します。

シングル(ブレステッド)スーツとは

シングルブレステッドスーツ(single breasted suit)とは、通称シングルスーツ、シングルブレスト、シングルなどと呼ばれるスーツの形のことです。

シングルブレストは、ジャケットのフロントボタンが縦一列に並んで仕立てられており、ボタンの数によって2つボタンスーツ、3つボタンスーツ、段返り3つボタンスーツなどに分かれています。

参考|段返り3つボタンとは?2つボタン・3つボタンスーツの違いは?

ボタンの数に正式な決まりがあるわけではなく、国や時代によって好み・傾向が分かれます。日本ではトレンドによって3つボタンが好まれた時期もありますが、一貫して2つボタンの方が多く着用されてきました。

というのも、ベーシックな2つボタンのシングルブレストは、他のボタン数のスーツやダブルブレストよりもVゾーンが深いため、欧米人に比べて頭の割合が大きい日本人をスマートに見せることに役立ちます。

その他ディテールとして、シングルブレストの襟型は一般的にノッチドラペルが多く、フロントカットは留めるボタン位置を頂点にして広がったレギュラーカットやラウンドカットなど、ベントも一般的にはセンターベントですが、クラシックな英国スーツはサイドベンツが多く見られますし、クラシコイタリアではノーベントが見られます。

シングルブレストの着用シーンはとくに制限がなく、フォーマル、ビジネス、タウン、カントリーに合わせて着こなすことが可能です。

参考|フォーマルスーツ・タウンスーツ・カントリースーツの違いとは

ダブル(ブレステッド)スーツとは

ダブルブレステッドスーツ(double breasted suit)とは、通称ダブルスーツ、ダブルブレスト、ダブルなどと呼ばれるスーツの形のことです。

ダブルブレストは、ジャケットのフロントボタンが縦二列に並んで仕立てられており、フロントボタンの数によって4つボタンスーツ、6つボタンスーツなどに分かれています。

また、フロントボタンの配列で「オールインライン(平行に並んだボタン)」と「スプレッドアウト(V字型に並んだボタン)」に分かれ、配列によって飾りボタンが用いられるため、4つボタン1つ掛け、4つボタン2つ掛け、6つボタン1つ掛け、6つボタン2つ掛け、6つボタン3つ掛けなど、掛けるボタン数でも種類が分かれています。

その他ディテールとして、ダブルブレストの襟型は一般的にピークドラペルが多く、フロントカットも水平のスクエアカット、ベントもノーベントまたはサイドベンツが一般的です。

もちろん、ダブルブレストもシングルブレストと同じく着用シーンに制限はなく、フォーマル、ビジネス、タウン、カントリーのシーンに合わせて着こなすことが可能です。

シングルブレストとダブルブレストの違いを比べてみると、ダブルブレストの方がディテールがより明確に決められていることがわかります。

シングルブレストとダブルブレストの由来

以前に何度かお話している通り、シングルブレストのスーツは、元々モーニングコートやフロックコートをラウンジなどでカジュアルに着こなす貴族階級の平服として1860年頃に誕生したものです。

参考|デキる男の服装とは?スーツを着こなすため必要な内面の要素

流れとしては、軍服→オーバーコート(今で言うコート)→フォーマルウェア→ラウンジスーツ(今で言うスーツ)となります。

実は、ダブルブレストも同様の流れをたどっています。ただし、ダブルブレストの元服は、シングルブレストより実用的な衣服として存在していました。

というのも、ダブルブレストは日本で「両前」と呼ばれる通り、上前・下前どちらにもボタンホールがあります。それは、左右どちらからの風に対しても、ボタンの掛け方次第で防寒対策ができるという工夫です。

そのため、馬に乗る軍人や甲板に立つ船乗りなどが、防寒に優れたオーバーコートとして重用していました。シングルブレストとの違いは、その防寒機能であり、スタイリッシュと言うよりは実用性に優れた機能服の役割を担っていたわけです。

これが、現在も残るピーコート(pea coat)やリーファーコート(reefer coat)の原点です。一方、ダブルブレストのボタンの形を踏襲して、ラウンジスーツに仕立てられたのは、やはりシングルブレストと同様1860年頃になります。

ここで気付いた人もいるでしょう。ダブルブレストは、元々シングルブレストよりも実用性に優れた機能服、つまり歴史的に見るとカジュアルな要素が強い服なんです。

シングルスーツとダブルスーツのイメージ

では、わたしが冒頭で話した「ダブルブレストの着用イメージさえも変えてしまうかもしれない」とはどういうことなのか。これまでダブルブレストに抱いていたイメージが、どのようなものか挙げてみます。

イメージ1.年配はダブル、若者はシングル

年配はダブルブレスト、若者はシングルブレストを着るイメージがありますが、元々スーツのダブル・シングルに年齢の違いはありません。

強いて言うなら、ダブルブレストはそのシルエットのため重厚に見え、シングルブレストはスマートに見えます。そのため、若者はダブルブレストのシルエットを敬遠し、徐々に年配者だけが着るイメージになったのかもしれません。

イメージ2.格式が高いのはダブル、簡略はシングル

ダブルブレストは格式が高く、シングルブレストは簡略化したものだというイメージを持つ人がいますが、両者に格式の違いはありません。

前述した歴史を見て分かる通り、どちらかと言うと元々ダブルブレストの方が、機能的でカジュアル仕様だったわけです。スーツのディテールは、機能的であるほどカジュアルになります。

もちろん、現在のスーツはオーバーコートではないため、ダブル・シングルに機能の違いはなく、ダブルブレストの方が格式が高いというのは単なるイメージです。

イメージ3.葬儀はダブル、お通夜はシングル

スーツだけではなく礼服も含めた話ですが、お通夜はシングルブレストで葬儀はダブルブレストというイメージを持つ人はいます。

一般常識として、お通夜は急に駆けつけることが多いため服装の決まりがなく、葬儀は日程が決まるため礼服を着用するものです。これが拡大解釈されて、お通夜はシングルのブラックスーツ、葬儀はダブルのブラックスーツとなったのかもしれません。

そのため、お通夜であれ葬儀であれ、ダブルブレストに比べてシングルブレストが礼を欠く、マナー違反ということはありません。

※不幸が重なる意味を避けるため、通夜・葬儀はシングルブレストという考え方もある

イメージ4.結婚式はダブル、葬祭はシングル

また、葬儀はシングルブレストで、結婚式は幸運が重なるようにダブルブレストだというイメージを持っている人もいます。縁起を担ぐことは悪いことではありませんが、これがマナーとして決まっているわけではありません。

イメージ5.未婚者はシングル、既婚者はダブル

「結婚してるんだから、そろそろダブルのスーツ用意しなきゃ。」なんて言われたことがある人もいると思います。

たしかに和服の場合は、振袖が未婚女性の正装、黒留袖が既婚女性の正装ですが、スーツでこのような分け方はありません。どこでこのようなイメージになったのか……やはり年齢的な話でしょうか。

※色留袖も既婚女性の正装でしたが、近年は未婚女性も着るようになった。

イメージ6.お金持ちはダブル、それ以外はシングル

これは完全にバブル時代の土地持ちのイメージが定着したものでしょう。1980年代-90年代初頭はダブルブレスト、カラフル、ワイドシルエットのスーツが流行り、それをお金持ちの人が派手に着こなしていました。

そんなダブルブレストを着た人に遠慮して(立てるために)、周囲の人がシングルブレストを着る……というのは想像できます。

イメージ7.太めの人はダブル、細めの人はシングル

太めの人、身体が大きい人はダブルブレスト、細めの人、身体が小さい人はシングルブレスト……というのはマナーでもイメージでもなく、着こなしとしては本当のことです。

太っている人が見た目をマイルドにするためにピッタリサイズのダブルブレストを着て、痩せた人が貧弱に見えないために若干余裕があるシングルブレストを着ることは着こなしの1つの方法です。

スーツはどんな体型の人でも着こなすことが可能な服なので、シングル・ダブルどちらも体型に合わせた調整をすれば問題ありません。

もちろん、顔が小さい、上半身が大きい、足が長い、程良く筋肉が付いているなど欧米人向きの体型の人であれば、より楽にかっこいい着こなしができることは間違いないのですが。

シングルスーツとダブルスーツの使い分け

これまで日本ではダブルブレストに対する様々な思い込みがあり、何となく若者には縁遠いスーツというイメージがありました。

また、単なる思い込みだと知っていても、若者がダブルブレストを着るには「◯◯と思われるかも……。」という抵抗があったため、なかなか着用する機会がありませんでした。

それが昨今のダブルブレストの流行りによって、若者にとってのネガティブなイメージが変わりつつあることは良いことですね。元々ピーコート大好きな日本人からすれば、今まで敬遠されてきたことが不思議なくらいです。

なお、ダブルブレストだから必ずしも英国調というわけではありませんが、スリーピースやチェンジポケット、グレンチェックなどに人気が集まっていることを考えると、ダブルブレストも含めて「英国調の復活」と看板を立てること自体に問題はないでしょう。

いずれにしろ、TPOに合わせてシングルブレストとダブルブレストを使い分ける必要はなく、好きなスーツを選べば良いのですが、せっかくなので今の流れに乗ってダブルブレストを1着用意することをおすすめします。

ちなみにダブルブレストは、スリーピース仕様でもフロントボタンを留めて着用することがマナーです。

参考|2つボタン3つボタンスーツでマナーが違う?1番下を開ける理由

そのため、シングルブレストに比べて着こなしの幅は狭くなります。とは言え、スーツの着こなしに慣れていない人にとっては、着こなしの幅が狭い方が逆にメリットなのかもしれません。

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