CATEGORY
May.29

段返り3つボタンとは?2つボタン・3つボタンスーツの違いは?

Written by伊藤進一郎

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

Please Share on

スーツによってボタンの数が違う?

ビジネススーツにはフロントボタンが主に2つか3つ付いており、それぞれ2つボタンスーツ、3つボタンスーツと呼ばれます。このボタン数の違いにどのような意味があるかわかりますか。

ためしに、「スーツ 3つボタン」で検索すると「時代遅れ」「ダサい」などの関連用語が出てきます。そして、わたしのワードローブには10数年前に買った3つボタンのスーツが何着も入っています……。

スーツのシルエットやディテールが時代によって変化することは、誰もが知っています。そうすると、わたしが持っている3つボタンスーツを今着ると、「時代遅れ」「ダサい」と言われてしまうのでしょうか。

スーツを選ぶ基準は色柄や生地だけでなく、細部のディテールの作りを見ることも重要です。そして、フロントボタンの数も、大切なディテールの1つです。

そこで今回は、2つボタンスーツと3つボタンスーツの違い、本当に3つボタンスーツが時代遅れなのかについてお話したいと思います。

2つボタンスーツとは

現在、日本のスーツ取扱店では2つボタンスーツを見かけることが多く、広い意味で一般的なスーツと言えるでしょう。

今の2つボタンスーツの特徴は、やや上付きのボタンですが、ボタンが少ない分Vゾーンがシャープで縦に長く、ウエストにくびれがあり、フロントカットが自然に広がったシルエットを持っています。

ちなみにVゾーンとは、スーツやジャケットを着たときの首周りからジャケットの前合わせに至るVの字に見える部分のことです。

ただ、現行の2つボタンスーツのシルエットが細身だからといって、2つボタンスーツすべてが細身というわけではありません。

1990年ごろに働き盛りだった60-70代の方の中には、2つボタンスーツはボックスラインでシルエットにゆとりがあるというイメージを持っている人も少なくないはずです。

ただ、スーツのシルエットが変わったとしても、2つボタンスーツの基本的な着こなしは、第二ボタンを外した「上1つ掛け」になります。

3つボタンスーツとは

さて、検索すると「時代遅れ」「ダサい」などと出てくる3つボタンですが、これは現在2つボタンが売れていて、街中でも2つボタンスーツを一般的に見かけるからです。

3つボタンスーツと言っても種類は2種類あり、1つは正面から見て3つのボタンが見えるタイプ、もう1つは段返りと言って第一ボタンがラペルのロールで隠れているため2つしかボタンが見えないタイプです。

スーツは元々3つボタンから始まっているため、伝統的な英国スタイルは3つのボタンが見える3つボタンスーツが中心です。この場合、第一ボタンと第二ボタンを留めた「上2つ掛け」、または第二ボタンだけを留めた「中1つ掛け」をします。

1990年代後半に日本で3つボタンスーツが流行ったときは、「上2つ掛け」がマナーのように言われていたため、Vゾーンが狭く、ナローラペルやナロータイなどを合わせて、全体的に細身でかっちり着られていました。

段返り3つボタンスーツとは

もう1つの段返り3つボタンスーツとは、ジャケットの第1ボタンがラぺル裏に隠れた仕様のスーツです。

段返り3つボタンは1900年ごろにアメリカのブルックスブラザーズが製品化し、それがイタリアに伝わったため、英国のクラシックなスタイルに段返り3つボタンはありません。

現行の段返り3つボタンスーツの特徴は、基本的にシャープなシルエットは変わりませんが、ややゆったり作られています。また、第二ボタンだけを留める「中1つ掛け」になり、第一ボタンを留めない(留められない)ためVゾーンも広く見えます。

スーツのボタンの数と歴史

現在の形のスーツが登場したのはイギリス帝国ヴィクトリア朝の1850-1860年ごろで、貴族がフロックコートやモーニングからカジュアルに着るために開発された平服です(起源は諸説あります)。

この時代のスーツのボタンは3-4つでした(オーバーコート類は5つボタンなど)。もちろん、初めは全てのボタンを留めていましたが、1番下のボタンを外すようになった「アンボタンマナー」にはいくつかの説があります。

  • 1つボタンのモーニングと平服であるスーツを区別するために飾りボタンを1つ増やしたから
  • ジョージ4世がうっかりボタンを外していたのをフォローするためにボー・ブランメルが外したことがトレンドになったから
  • 節制不足で太ってしまったエドワード7世が下段ボタンを外したことから
  • 馬に乗る際に下段ボタンを留めていると乗りにくいことから

参考|2つボタン3つボタンスーツでマナーが違う?1番下を開ける理由

アンボタンマナーの起源として、ジョージ4世説やエドワード7世説がよく語られますが、おそらくどれも該当するのでしょう。どちらにしても、1920年ごろにはアンボタンマナーがあったということになります。

この過程で、前述した通りアメリカで段返り3つボタンスーツが製品化され、それがイタリアに伝わったため、段返り3つボタンはアメリカやイタリアのスーツのイメージになっています。

その後1930年代には、「どうせ段返りで第一ボタンを使わないなら取ってしまおう。」ということで、2つボタンスーツが作られました。

つまり、もっとも歴史がある仕様をクラシックスタンダードとするなら、3つボタンがスーツのクラシックスタンダードであり、2つボタンスーツは比較的新しい仕様ということになります。

2つボタン・3つボタンスーツはどっちが良い?

さて、2つボタンスーツと3つボタンスーツの特徴を書きましたが、どちらが良いというものではありません。重要なことはボタンの数よりも、ボタンの位置と全体的なシルエットです。

たとえば、英国調の3つボタンは「上2つ掛け」が着こなしのマナーだと思っている人もいますが、実際はナチュラルウエストを境に上下のバランスが取れていることの方が重要です。

そのため、無理をして「上2つ掛け」できっちり細身に着こなすだけではなく、段返り3つボタンのように「中1つ掛け」で余裕を持った着こなしをしても良いわけです。

もちろん、時代によってボタンの位置に多少の上下はありますが、ボタンを留めた位置からフロントカットが自然に広がったきれいなシルエットを作ることがナチュラルウエストの基本になります。

というわけで、「スーツ 3つボタン」で検索したときに「時代遅れ」「ダサい」などの関連用語が出てくるのは、ボタンの数のせいではなく、全体的なシルエットのせいだということになります。

ちなみに、2つボタンスーツは3つボタンスーツに比べて、Vゾーンがシャープで縦に長いため、胸部を大きく、頭部を小さく見せる効果があります。欧米人よりも頭の比率が大きい日本人が、2つボタンスーツの方が似合うと言われるのは、そのような理由もあります。

ただこればかりは個人差がありますし、前述した通りボタン位置を含めた全体のシルエットによっても変わるものだということを知っておいてください。

決して、(段返り)3つボタンスーツが流行遅れでダサい、2つボタンスーツが今どきでかっこいいというお話ではないので、勘違いしませんよう。

Related Tags

Please Share on

facebook

Be a man dressing to suit.