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スーツは適当に選んで欲しくない
さて、今回のテーマは「リクルートスーツとビジネススーツの違い」という、ある意味使い古されたお話です。
この手の話題は書籍や就活情報サイトにもありますが、あまり四角四面に話をしても面白くないので、実はリクルートスーツとビジネススーツには違いはないというスタンスで、なぜ分類があるように語られているのかを話したいと思います。
なぜこんなお話をするかと言うと、多くの人に「就活があるから仕方ない……。」「真面目に見えれば何でもいい……。」という気持ちでスーツを選んで欲しくないからです。
たとえその人にとってスーツの始まりがリクルートスーツだとしても、企業で働く限りスーツは着続けるはずです(業種や仕事内容によりますが……)。
スーツは決して安いものとは言えません。そのため、何となく世間一般で言われるまま適当にスーツを選んでしまうと、スーツの着こなしを知る機会を逃すことになり兼ねません。これは非常にもったいないことです。
もちろん、就活は大切なライフイベントの1つであるため、基本的なルールは守らなければいけません。
参考|リクルートスーツとは?いつ何着買えば良い?値段の相場や選び方
そのうえで、なぜリクルートスーツにルールがあるのか、リクルートスーツとは一体何なのかを理解しましょう。
リクルートスーツとビジネススーツでよく言われる違い
違い1.色や柄
よく言われるリクルートスーツの色は、ブラック、ダークネイビー、ダークグレー(チャコール)、柄は無地、またはシャドーストライプやピンチェックまでというものです。
対してビジネススーツの色は薄いグレーやブラウン、柄もピンストライプやチョークストライプ、ウィンドウペン、グレンチェックなど多種に使えて、おしゃれも楽しめるというものです。
整理をしましょう。ビジネススーツの基本はダークグレー、またはダークネイビーのいわゆるダークスーツで、略礼装にも含まれる正しいスーツの色です。柄はシャドーストライプ、ピンチェック、ピンストライプ、チョークストライプなどがビジネスシーンにふさわしいとされています。
参考|ビジネススーツを着こなしたい!絶対失敗しない王道の色使いとは
それ以外のグレンチェック、ウィンドウペンなどのチェック柄、またはストライプでもピッチ幅や線の太さ、色の組み合わせによってはカジュアル感が強くなるため、TPOに応じた着こなしが必要です。
たしかに就職活動で悪目立ちは避けたいため、通常のビジネススーツ以上にシンプルにまとめるのは賢い着こなしです。
ところが、ビジネススーツの着こなしを無視して「まずはブラックスーツを用意しましょう。入社後も着用できます。」という文章の多いこと……。本来ブラックスーツは略礼装であり、ビジネスシーンでは使いませんが、昨今の流れから”就活で着ても変ではない”と認められたスーツです。
そのため、就職活動にブラックスーツを着用するのは日本だけに見られる特徴であり、入社後にビジネススーツとして着用するのはおかしな話です。
違い2.生地
よく言われるリクルートスーツの生地はウールにポリエステル混の化繊で作られ、一方ビジネススーツはウール100%が多いというもの。
たしかに、巷にあるいわゆるリクルートスーツの多くはポリエステル混ですが、これはリクルートスーツの特徴ではなく、スーツの価格を抑えたり、スーツに機能を持たせるための工夫に過ぎません。
もっと言うならば、定価6-7万円以上でなければウール100%のスーツにはなりません。では、入社後に6-7万円のスーツを着なければ仕事にふさわしくない格好ということでしょうか。
もちろんそんなことはなく、仕事柄スーツが必要でスーツ着用時間が長いわたしでも、6-7万円のスーツをポンポン買うわけにはいきません。
リクルートスーツの耐久性が低いと言われるのは素材によるところも大きいのですが、学生向け、就活向けという限られた期間の着用に合わせて作られているためや、お手入れの手間が少なくシワ予防ができる素材でもあるからです。
入社後もある程度の期間使えて、見た目も良いスーツにしたい場合は、ウールの割合が多い相応の生地を使ったスーツを選んで、日々お手入れすることも検討材料の1つです。
違い3.価格
よく言われるリクルートスーツの価格は2-3万円、対してビジネススーツの価格は4-5万円以上です。
これはリクルートスーツだからいくら、ビジネススーツだからいくらという話ではありません。おおよそ4-5万円以上するスーツから、生地や縫製などに違いが出てくるためです。
前述した通り、さらに6-7万円以上でウール100%になったり、8-9万円以上から海外のブランド生地が使われだします。それ以上の金額は縫製など細部のこだわりがあったり、特殊な加工があったり、インポート生地でもレダやゼニア、ロロ・ピアーナなどの一流ブランド生地を使うためです。
極端な話、レギュラーシルエットの無地のダークスーツで全体的に就活仕様の着こなしをしていれば、ブランド生地を使った10万円のスーツを着ていても何の問題もありません。
おそらく企業の面接官の多くは、質の良い生地と仕立ての高価なスーツを着ていても気付かないでしょう。
リクルートスーツの着回し
では、リクルートスーツとして販売されているスーツは、就活後に着回しが可能なのでしょうか。ダークスーツとブラックスーツでどのように変わるのでしょうか。
着回しケース1.内定式
企業は10月以降に内定式を行うケースが多いのですが、その際はリクルートスーツでも問題はありません。余裕があれば秋冬用のビジネススーツを購入しても良いのですが、企業の雰囲気やスタイルがわからなければあえて購入する必要はありません。
そもそも初めからリクルートスーツとビジネススーツを理解していれば、分けて考えることはなく、入社後しばらく着用できるスーツを購入するはずです。
着回しケース2.卒業式
大学や短大の卒業式もリクルートスーツで問題ありません。「式典だから」という理由でブラックスーツを着る必要もありません。そもそも、式典はダークスーツも略礼装として認められていますし、門出の日なので少々カラフルでも問題ないでしょう。
おしゃれをしたい場合は、ワイシャツやネクタイの色・柄でアレンジ、またポケットチーフ(ポケットスクエア)やフラワーホールの飾り(ラペルピン、ブートニエール)に遊びを設けると、ダークスーツ(仮にブラックスーツ)でも華やかになります。
参考|フラワーホールの由来は?襟のボタン穴は飾り?何かを入れる?
着回しケース3.入社式
入社式で着るスーツも、就活で使ったスーツで問題ありません。
ただし、”式”が付きますがこちらは式典ではなく、あくまで仕事の一環です。そのため、就活スタイルと同じように飾りっ気がなく、シンプルで清潔感のある着こなしが必要です。詳細はまた別途お話します。
着回しケース4.仕事
では、実際に仕事が始まったときもリクルートスーツは使えるのでしょうか。
これは前述した通りで、ビジネススーツの基本はダークスーツ、柄はシャドーストライプ、ピンチェック、ピンストライプ、チョークストライプなどがふさわしい着こなしです。
そのためダークスーツであれば間違いはなく、あくまでも昨今の日本の流れで考えると、たとえブラックでも無地でなければ許容範囲といったところでしょうか。
着回しケース5.結婚式
結婚式のスタイルは出席者の立場によって異なりますが、多くは主賓ではなく一般招待客だと思います。その場合、スーツは略礼装のブラックスーツ※かダークスーツになります。
結婚式は白黒で揃えるイメージをする人がいますが、あまりに白黒だと葬儀のように見えてしまいます。そのため、ジレ(ベスト)やネクタイをシルバーにしたり、ポケットチーフをシルバーや爽やかな薄いブルーにするなどの工夫が必要です。
※結婚式に一般招待客がブラックスーツを着るのも日本独特で、欧米ではダークネイビーが多い。
着回しケース6.お通夜
お通夜は急に訃報を知り、職場などから駆けつけることも多いため、服装はそれほど気にされません。時間があればダークスーツやブラックスーツに着替えた方が良いのですが、作業着や私服の人も多く参列しています。
着回しケース7.葬儀告別式
葬儀告別式はお通夜のように突然ではなく、日程が決まっています。そのため一般的には礼服の着用がマナーですが、ブラックスーツでも構いません。逆にダークスーツは着用できません。
簡単に言うと、ブラックスーツ、無地白シャツ、無地ブラックネクタイ、黒革ベルト、黒革靴(ストレートチップ、プレーントゥ)が最低限の礼を持った着こなしになります。こちらも詳細は別途お話します。
初めから良いビジネススーツを買うべき?
色や柄、生地、価格から紐解くと、「実はリクルートスーツとビジネススーツには違いはない」という理由がわかったはずです。
ただ一点、リクルートスーツで特徴的なことは、ビジネスシーンにはそぐわない無地のブラックスーツが認められていることですね。
ではこれらを踏まえたうえで、社会人として働くことを見越して、就職活動用にある程度のビジネススーツを買った方が良いのでしょうか。
リクルートスーツは、通常よりも安く販売されることが多い商品です。なぜなら、初めてのスーツがリクルートスーツという人は多く、スーツ取扱店はそれをきっかけに長く利用する顧客になって欲しいからです。
とくにスーツ専門店では、リクルートスーツ、新入社員用のビジネススーツに力を入れているため、個人的にはスーツ専門店を積極的に活用することをおすすめします。
参考|スーツ初心者には量販店・ツープライスショップがおすすめの理由
「でも、どうせ入社後も着るんだから、良い生地・縫製のある程度高いスーツとか、テーラーでオーダーした方がいいんじゃないの?」
もし入社したい企業のスタイルがわかっていて、確実に内定をもらえるなら、初めからスーツにお金をかけても問題ありません。
就活スタイルで大切なことは、清潔感があること、協調性があることです。つまり悪目立ちをしないことが鉄則です。ところが、入社した企業がカジュアルな着こなしの環境だった場合、「良いスーツだけど環境に合わないから使えない……。」となるかもしれません。
スーツは何着も買い替えられるものではないため、何年もかけて少しずつ着こなしを身に着けていきます。
そのため、初めは清潔に見える基本的な着こなしを覚えることがスタートです。良い生地のスーツはお手入れも大変なので、それらも踏まえて徐々に覚えていきたいですね。