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リクルートスーツは特殊なスーツ?
学生が就職活動を始める前に、まず準備しなければいけないものが「リクルートスーツ」です。
春先になると「就活」「リクルートスーツ」というキーワードはそこかしこで聞きますが、リクルートスーツがどのようなスーツなのか明確に把握していない人は多いでしょう。
就活未体験の学生からすれば、わざわざ「リクルートスーツ」という単語があるため、社会人が着るスーツとは違う就職活動のための特殊なスーツだと思うかもしれません。
リクルートスーツの定義やルールは、わたしが就活に勤しんだ十数年前とはいくつか違う点もあります。
そのため、今後就活を体験する学生だけではなく、彼らを面接する企業の人事担当も正確なトレンド(というか流れ?)を把握しておくべきでしょう。就活スタイルの認識違いによる不当な評価だけは、あってはならないものですから。
では、現在のリクルートスーツには、一般的にどのような基準やルールが備わっているのでしょうか。
今回は、リクルートスーツとはどのようなスーツなのか、どのような基準があるのかなどをお話したいと思います。
リクルートスーツとは
リクルートスーツ(recruit suit)とは、無地のダークネイビーやダークグレイ、ブラックなどの生地で仕立てられたスーツのことで、就活スーツとも呼ばれます。と言ってもこれは一般的なお話で、リクルートスーツに明確な定義はありません。
就活スタイルで大切なことは、清潔感があること、協調性があることです。つまり悪目立ちをしてはいけません。
上記のシンプルなスーツに合わせて、白のワイシャツ、控えめなネクタイ※、黒のベルトにストレートチップなどの革靴を揃えるのが典型的な就活スタイルです。詳しくは以下を参考にしてください。
参考|就活の面接で失敗しないスーツの正しい着こなしと基本的なマナー
※ネクタイでマジメに見せるならネイビーやエンジ、ダークグレーのレジメンタルや小紋、爽やかに見せるならベージュや薄いブルーなどが妥当。
リクルートスーツを買う時期は?
当たり前ですが、リクルートスーツは一連の就職活動が始まる前に購入して、何度か着慣れておいた方が良いでしょう。男性ならネクタイの結び慣れが必要なので、就職活動開始の1-2か月ほど前が良いと思います。
就職活動時期は対象企業によって異なりますが、近年は3月頃に企業エントリーを開始して、6月頃に試験や面接などの企業選考が始まります。そのため、大学3年生(短大1年生)の1-2月頃にリクルートスーツを買えば良い……かと言うとそうではありません。
リクルートスーツは就職説明会や企業訪問だけではなく、OB・OG訪問やインターンシップでも着ることがあり、早い人は大学3年生の夏前から必要です。またどちらも行わないとしても、証明写真撮影などを含めて何かと余裕を持っておきたいところ。
そのため、セール開始時期の12月には1度スーツ専門店に見に行くことをおすすめします。
参考|セール時期・買い時はいつ?高コスパで失敗しないスーツの買い方
リクルートスーツは何着購入する?
リクルートスーツの使用頻度がもっとも高いのは、就職活動が盛んになる春先から秋口にかけてです。そのため、春夏用のスーツを2着購入すると良いでしょう。
就活生の企業エントリー平均数は30社ほど※、実際に試験や面接を受けるのは5-10社と言われていますが、場合によってはそれ以上の企業を行き来するため、スーツが連日必要な場合もあります。
参考|2018卒就活、エントリー社数は平均26.3社 – 3月1日時点 | マイナビニュース
そんなときにスーツ1着では、クリーニングにも出せず心もとないですよね(本来はクリーニングよりも毎日のケアが必要)。就活に集中したいときに、「スーツがシワシワ……テカテカ……。」と悩むのは馬鹿らしいので、最低2着あれば何とか対応が可能です。
ちなみに、就活で内定が多く出る時期は7-9月頃、内定式は10月が一般的です。そのため、晴れて内定が出たら、入社後に使える秋冬スーツを1着検討するのはありです。
リクルートスーツの値段はいくら?
リクルートスーツは、ディテールにこだわっておしゃれを楽しむスーツではありません。また、良い生地を使って仕立てても、面接で評価されるわけではありません。
そのため、就職活動から入社後1年の間で使うことを目安にして購入する金額を決めます。リクルートスーツに限定すると、スーツ量販店やツープライススーツショップでの購入がもっとも失敗しません。
そう考えると、金額的には2-4万円台で買えるスーツを考えれば良いでしょう。わたしが就職活動をしていた頃のリクルートスーツは4-5万円以上したので、今は安くなりましたね。
リクルートスーツの選び方
選び方1.色はブラック?ダーク?
「リクルートスーツ2着のうち、まず1着はブラックスーツを用意しましょう。」とよく言われますが、黒は正装(というよりも葬儀)をイメージするため、本来ビジネスシーンにはそぐわない色です。
- 就職活動は礼儀を重んじる場所だから
- 企業が黒以外は印象が悪いとしたから
- 今後の冠婚葬祭にも使えて便利だから
- いつの間にか黒を着るようになったから
上記のようにブラックが定着した理由は様々言われていますが、ビジネススーツの基本はダークカラーで、ブラックは後から”就活で着ても変ではない”と日本の中で認められたスーツです。
そのため、ビジネススーツという観点で考えるなら、1着はダークネイビー、2着買うならダークグレー(チャコール)、その次に欲しい人はブラックという優先順位でスーツを買うことをおすすめします(ただし今の就活生がブラックを選ぶ割合は7割以上もいるそう……)。
もちろん、就活で認められているため、「仕事には使えないけど、今後の冠婚葬祭にも使えて便利そうだ。」と思った人は、あえてブラックを選んでも良いとは思います。
選び方1.2つボタン?3つボタン?
スーツの上着のボタンには2つボタンと3つボタンがありますが、近年のスーツは2つボタンが多く、巷では3つボタンが古いスタイルと認識されています。とは言え、昨今は段返り3つボタンも多く流通しています。
異論はありますが、上着のフロントボタンは少ないほどフォーマルに近付き、多いほどカジュアルと言われます。たとえば、モーニングやタキシードはボタンが1つ、ディレクターズスーツ(ベストノアール)の多くはボタンが2つですね。
ただし、スーツの起源は3つボタンから始まっており、それ以前のフロックコートは5つボタンです。そのため、現在のリクルートスーツの基本(売れ筋)は2つボタンですが、段返り3つボタンでも問題ありません。
参考|段返り3つボタンとは?2つボタン・3つボタンスーツの違いは?
選び方3.パンツのプリーツ(タック)は?
パンツのプリーツ(タック)の有無に決まりはありませんが、履き心地が変わりますし、シルエットにも影響します。
パンツのトレンドで言うと、プレーンフロント(ノータック)からシングルプリーツに変わりつつあります。ただし、それはテーパードパンツのシルエットを活かすために、腰にボリュームを出しているからです。
参考|タック・プリーツ・ダーツの違いは?ワンタックパンツはダサい?
体型が細身でお尻周りに余裕がある人は、プレーンフロントでストレートシルエットのパンツを履くと全体がスッキリしてフレッシュに着こなせます。もちろん、お尻周りに余裕が欲しい場合はシングルプリーツでも構いません。
どちらにしてもパンツは腰ではなく、お尻が合うかどうかを見ます。このあたりの調整は吊るしでは難しい場合があり、既製で違和感がないかを確かめるため、早めにパンツを試着することが大切です。
選び方4.裾のブレイク(クッション)は?
パンツの裾の長さは革靴にかかる布の量によって、ワンブレイク、ハーフブレイク、ノーブレイクなどと呼ばれ、革靴を履いたときの布のたるみによって見え方が変わります。
カジュアルなパンツトレンドはアンクル丈ですが、さすがに就活でアンクル丈は冒険しすぎです。就活情報サイトなどを見ると、ハーフブレイクやワンブレイクが奨められていますね。
単純な好みですが、ワンブレイクはパンツのシルエットが少し崩れてもったいない気がします。反対にノーブレイクは少しだけカジュアルなイメージになります。
企業の面接官がパンツの裾を見て判断することはありませんが、ハーフブレイクが無難ですね(個人的にはギリギリのノーブレイクがおすすめ)。
選び方5.裾上げはシングル?ダブル?
裾上げ時にシングル(プレーンボトムス)にするか、折り返してダブル(カフドボトムス)にするか……これは正直どちらでも構いません。
ただし、一般的にフォーマルの裾はシングルがマナーのため、リクルートスーツもフォーマルに寄って「シングルが正しい。」と言う人はいます。
こちらも好みの問題ですが、今後リクルートスーツで着回しを考えるなら、個人的にシュッと見えるシングルで良いと思います。
参考|パンツの裾上げはダブルとシングルどっちが良い?幅の決まりは?
選び方6.機能性スーツはあり?
スーツ量販店でリクルートスーツを買う場合に考慮したいのが、機能性スーツかどうかです。まず大前提として、わたしはリクルートスーツ含む初めてのスーツは、スーツ量販店かツープライススーツショップで買うべきだと考えています。
参考|スーツ初心者には量販店・ツープライスショップがおすすめの理由
その理由は、「そこそこの値段で、ある程度品質の良い、今時の落ち着いたスタイルのスーツが手に入り、既製品の割には自分の体型に合うようにリフォームしてもらえるから」ですが、もう1つ機能性スーツの存在も大きいです。
就活生は慣れないスーツをを着て、日々緊張しながら面接に挑んでいます。何社面接を受けても、内定をもらうまでは気持ちに余裕はありません。そんな中で毎日スーツのケアをするのは負担です。
そのため、防しわ加工やウォッシャブル(洗える)などの機能性スーツがあると便利ですね。
守破離とスーツの着こなし
よく新卒生の就職活動に対して、「日本はみんな同じスーツを着ていて何だかおかしい。」と揶揄する人がいますが、おかしいのはスーツではなく、就活スタイルや集団の就職活動の方です(ブラックスーツには違和感がありますが)。
ビジネススーツの基本は、ダークスーツで黒の革靴です。個性を出しやすいのはワイシャツやネクタイですが、こちらも着こなしの基本テクニックがあるため、悪目立ちをせずに個性を出すことは簡単ではありません。
前述した通りリクルートスーツで大切なことは、清潔感があること、協調性があることです。
就職面接は個人の考え方や特性を判断するために、それ以外の評価はなるべくフラットな方が良いはずです。そのため、みんなが同じようなスーツスタイルになることは仕方がないことだと思います。
就職活動のスーツのマナーは、社会に出てからのスーツの着こなしに通じるため、知っておかなければいけない常識ばかりです。
参考|就活の面接で失敗しないスーツの正しい着こなしと基本的なマナー
まずは常識を知り、基本を押さえ、そこから外しを覚え、自分なりの個性を出していく、これは日本に伝わる「守破離(しゅはり)」の考え方そのものではないでしょうか。何事も真似ぶ(学ぶ)ことが大切で、徐々に力をつけることでようやく個性が際立つものです。
リクルートスーツ(本来はビジネススーツ)の着こなしは、社会で働くためのもっとも基本的なルールの1つとして捉えるべきなのでしょう。