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靴下のチラ見せとは
2013-2014年頃から、男女のカジュアルファッションで足元から靴下が見える「靴下のチラ見せ(ソックス見せコーデ)」が流行っています。
というのも、ジーンズであればロールアップ、スラックスであれば9分丈クロップドパンツやガウチョパンツで、足元に抜け感があるパンツが流行っていたためです。
たしかに首元、手首、足首という3つの首で素肌を見せたり、色味の抜けどころを作ったり、わざとチープなアクセを持ってくることは、基本的な着こなしを崩して、抜け感を作るための応用テクの1つです。
また、首元、手首、足首に抜けを作ることで、細い部分を強調できるため、着こなしがスマートに見えることもよく知られるところとなりました。
ただし、これはあくまでもカジュアルな洋服の着こなしのお話。
巷でたまに見かける、ネイビーのビジネススーツにオレンジやベージュの靴下、グレーのビジネススーツにサックスブルーの靴下など、たしかに素敵に着こなしている人はいますが、果たして「スーツで靴下チラ見せ」はアリなのか、ナシなのか……。
今回は、スーツスタイルで靴下チラ見せはアリかナシか、着こなしのマナー違反にならないのかについてお話したいと思います。
ビジネスシーンで肌を見せてはいけない
まず、基本的なルールとして、完成されたスーツスタイルにおいて肌見せはマナー違反です。つまり、首元、手首、足首を見せてはいけません。
首元はネクタイをきっちり締めるか第一ボタンまで留める、手首は長袖のボタンやカフリンクスを留めてジャケットから袖が見える状態、足首はいつでもスネが見えないようにロングホーズを履くことが正当なスーツスタイルになります。
参考|スーツに合わせるロングホーズとは?靴下の長さの種類と名称
「でも裸足で足首出したり、派手な色の靴下履いて、スーツを着崩しているイタリア人のスナップをよく見かけるんだけど……。」
簡単に「着崩し」という言葉を使って、着崩し全てがさもおしゃれのような物言いをする人もいますが、スーツの着崩しは時と場合によります。
とくに日本人にとってのスーツと言えば、フォーマルかビジネスシーンばかりなので、着崩す機会はほとんどないと言って良いでしょう。スーツの着こなしは、TPPO(Time/Place/Person/Occasion)で考えなければいけません。
スーツスタイルにはフォーマルとビジネス以外に、タウンやカントリーという着こなしがあり、すべてのシーンで完成されたスーツスタイルを守らなければいけないわけではありません。もちろん、セパレートスタイル(ジャケパン)は、本来のビジネススタイルではありません。
参考|フォーマルスーツ・タウンスーツ・カントリースーツの違いとは
上記写真を見て分かる通り、セパレートスタイルでサングラスやハット、チーフの挿し方、ブートニエール、ダブルモンクの靴など細部にカジュアルな要素を盛り込んでいるため、誰が見てもビジネスシーンに合わせたスーツスタイルではないことがわかります。
ビジネスシーンで靴下チラ見せの方法
ビジネスシーンでの肌見せがNGなことと同様、TPPOで考えると目立つ色味の靴下のチラ見せも基本的にはマナー違反です。
では、アンクルパンツを履いている場合はどうすれば良いでしょうか(基本的にビジネススーツに極端なアンクル丈がそぐわないことは大前提ですが……)。
短めのパンツから見えてしまう靴下の履き方は以下の2通りです。
方法1.靴下を靴の色に合わせる
靴下の選び方で一番最初に教わるのは、「靴下は革靴の色に合わせる」という着こなしのルールです。
最初に購入する革靴は、黒の内羽根ストレートチップ(またはプレーントゥ)が基本、というか絶対なので、靴下の色も必然的に黒を選びます。足元はよく見られる部分なので、足元の色を統一して重厚に締めると、着こなしに安定感が生まれます。
方法2.靴下をパンツの色に合わせる
ただし、アンクルパンツは裾から見える足首が細いため、靴と靴下が黒でも足首が目立ちます。着こなしによっては、それが浮いてしまう場合もあります。
そこで、次に考えるのは「靴下はパンツの色に合わせる」という着こなしのルールです。
靴下とパンツの色を合わせることで、革靴と靴下の色を合わせるよりも、ボトムスとしての一体感が出やすくなります。
よくやりがちなのは、「グレースーツに黒の革靴+ネイビーの靴下」、または「ネイビースーツに黒の革靴+グレーの靴下」という組み合わせです。すべてオーソドックスな色使いにもかかわらず、足元の色に統一感がないため、着こなしがチグハグなイメージになります。
カジュアルシーンで靴下チラ見せの方法
では、ビジネスシーン以外でのスーツやジャケットを着た靴下チラ見せなら何でも良いか、と言うとそんなことはありません。
カラーリングは様々なパターンが考えられますが、靴下の色を靴やパンツと変えたい場合は、以下の4つの組み合わせで靴下の色を考えると良いでしょう。
- ネクタイやチーフの色に合わせる
- ジャケットの色に合わせる
- 靴下の色だけを外す
- パンツor靴と色を合わせて柄を入れる
方法1.ネクタイやチーフの色に合わせる
ネイビースーツにサックスブルーのシャツ、そして一段明るい青の靴下、ネクタイとチーフも同色を合わせています。全体が青系統なので統一感があり、足元は茶色の外羽根ウイングチップで締めたアズーロ・エ・マローネの着こなしです。
方法2.ジャケットの色に合わせる
セパレートスタイルの場合は、ジャケットの色と靴下の色を合わせるとまとまりが出ます。
これはもっとも簡単な靴下チラ見せスタイルの作り方ですが、あくまでも合わせるのは靴下とジャケットの色です。靴やパンツも同色にしてしまうと、わざとらしさが強くなったり、重く見える場合があります。
方法3.靴下の色だけを外す
全体をモノトーン(黒、白、グレー)でまとめて、靴下だけ発色が強いオレンジを使っています。ついでに、靴とネクタイの色も黒(ダークネイビー?)で合わせていますね。
ただ、これだけ発色が強いオレンジを使うのはかなり難しい靴下のチラ見せです。もし派手なカラーに挑戦するなら、ボルドーやバーガンディーなど茶色が混じった色が良いでしょう。そうなると、ネクタイも合わせたくなりますが。
方法4.パンツor靴と色を合わせて柄を入れる
もっとも無難な靴下チラ見せコーデですが、おしゃれでチラ見せをしたいのか、普段から柄物の靴下を履いているのか、区別が付きづらい合わせ方でもあります。とくに普段よく使う黒やネイビーで柄物の靴下を使う場合は、色使いに注意が必要です。
上の写真では、普段は使いづらい薄いグレーの靴下にドット柄なので、ちゃんとパンツに合わせたことがわかりますね。
スーツはビジネスとカジュアルをきっちり分ける
さて、普段からビジネススーツを着て、何気なく柄物の靴下を履いている人は少なくないと思います。
ドットだけでなく、ストライプやアーガイル、小紋など、靴下くらい身体に占める着用範囲が狭ければ、個性を出してもやりすぎ感が出ない場所なので使いやすいことはわかります。
ただ注意してほしいのは、ビジネスシーンで柄物の靴下を履くことはカジュアルな着こなしだということです。
前述した通り、ビジネスシーンでは肌を見せること、目立つ色味の靴下を見せることは基本的にはNGです。以前、お話した腕まくりと同じで、ビジネススーツの着崩しやカジュアルミックスが許されるシチュエーションは限られます。
- 作業において袖が汚れたり濡れる可能性がある場合
- アフター5でドレスコードがない食事の場
- もうすぐ仕事終わりのため、他人の前で袖を伸ばさない場合
などが考えられます。ビジネススーツは、あくまでも「マナー>おしゃれ」が前提です。着崩しがかっこよく見えることもありますが、ビジネスシーンでは人がいることを意識して、装いで信頼を得られる努力をしましょう。
ちなみに、スーツに白の靴下を履いてチラ見せする人もいますね。たしかに白の靴下をドレッシーなジャケットやタキシード、スポーツジャケットに合わせるのは、マイケル・ジャクソンも「Billie Jean」や「Smooth Criminal」で見せていたスタイルなのでわからなくはありません。
ただ、あれを着こなすのはどのようなシーンでも普通の人には難しすぎます。まぁ、あれは舞台衣装だと言ってしまえばそれまでなのですが……。
靴下のチラ見せは初めはシンプルでさり気なく、まずはジャケットやネクタイ・チーフに色を合わせることからです。
慣れてくれば、仕事終わりにおしゃれなお店にディナーに行く際、靴下とネクタイ、チーフを変えて、色を合わせてから出かけると悶絶するほどかっこいい着こなしに変わると思います。
その際は、ぜひネイビーのスーツにバーガンディーカラーのネクタイ・チーフ・靴下を用意してみてください。わたしの個人的な好みです。