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May.15

スーツの流行の生まれ方は?ファッショントレンドの予測は可能?

Written by伊藤進一郎

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

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トレンドとは

トレンド(trend)とは、傾向や動向、流行りを意味します。様々な物事、情勢に対して人々がどのように考え、どう行動しているかをマクロ的に表現した言葉のことです。昔トレンディドラマなるものがありましたが、要は流行のことです。

難しそうな話は少し脇に置くとして、わたしたちが最もよく聞くトレンドは「ファッショントレンド」ですね。トレンドは現在の状況を表すため、時代によって常に変化します。そのため、今から10年前には10年前、100年前には100年前のファッショントレンドがありました。

少し前のスーツトレンドはナチュラルなイタリアンをベースにして、生地やアイテムもイタリアンやフレンチテイストを取り入れたコンチネンタルな装いが10年ほど続いていました。表現がちょっと古いですが、フランクなちょい悪オヤジがベースだったわけです。

ところが、最近はトレンドに変化が見られ、20年前に流行ったクラシック(トラディショナル)な英国調やアイビーテイストに近づいています。

スーツはストライプが強いネイビーのパワースーツ、ダブルブレスト、スリーピース、メタルボタンのブレザー、パンツはプリーツ入りテーパード、シャツはボタンダウンやクレリックなど……わたしがスーツを買い始めたころのテイストもいくつかあって、ちょっと嬉しくなったり……。

ところで、これらのトレンドは2017年に入って具体的な変化として見かけるようになりましたが、実は2016年にはすでに業界各所でトレンドとして注目されていました。

「あれ?トレンドって傾向や動向だから、未来はわからないんじゃないの?」

そう、本来トレンドは”今何が流行っているか”を大勢的に見るものなので、一般人の動向が中心になるはずです。ところが業界では次のトレンドが見据えられていた……これは一体どういうことなのでしょうか。

ファッショントレンドが決まる流れ

ファッショントレンドはアパレル業界が作っているというのはよく聞くお話ですが、「じゃあ次はこのシルエットを流行らせましょうか!」という明確な決めごとがあるわけではありません。

ファッショントレンドは、テーマやカラーなどのコンセプトに沿って方向性が決まり、コンセプトを基に多くのデザイナーがデザインし、その結果から導き出されます。

流れ1.色の選定

ファッション雑誌や情報番組で「今年のトレンドカラーは◯◯」と言われますが、このトレンドカラーはシーズンの2年以上前から、インターカラー(国際流行色委員会:INTERNATIONAL COMMISSION FOR COLOR)で検討が始まります。

カラートレンド情報の検討

出典|JAFCA | 一般社団法人日本流行色協会 | Color Trend

インターカラーには日本、アメリカ、イギリス、イタリア、韓国、スイス、スペイン、タイ、中国、デンマーク、ドイツ、トルコ、ハンガリー、フィンランド、フランス、ポルトガルが加盟(2016年12月現在)しており、「レディスウェア」「メンズウェア」「プロダクツ&インテリア」「メイクアップ 」のカテゴリでトレンドカラーが選定されます(選定色)。

Dolce Vita
※JAFCA(日本流行色協会)が選定した2018SSメンズウェアのトレンドカラー「Dolce Vita ドルチェ・ヴィータ」

流れ2.トレンドの方向性

選定色が決まると、シーズン1年半前には選定色を基にデザインコンサルティングを行うスタイリングオフィスが、素材やシルエットを交えたファッショントレンドの方向性を作ります。

スタイリングオフィスは世界中にありますが、とくに「PROMOSTYL(プロモスティル)」「TREND UNION(トレンドユニオン)」「Nelly Rodi(ネリーロディ)」「Carlin International(カルラン・インターナショナル)」「Peclers Paris(ペクレール・パリ)」が有名です。

スタイリングオフィスはマーケティングリサーチなどを行い、素材やシルエットなど次のトレンドを予想し、「トレンドブック」としてまとめます。たとえば、PROMOSTYLのトレンドブックの内容は以下のものです。

流れ3.繊維の展示会

シーズン1年前になると繊維の展示会「ヤーン・フェア(Yarn Fair)」で、トレンドになる繊維素材の発表が行われます。ヤーン・フェアは世界中で行われますが、日本だと「ジャパン・ヤーン・フェア」という大きなフェアがあります。

ジャパン・ヤーン・フェアの場所は毎年変わりますが、たとえば2018年の場合2月に愛知県一宮市で”15th JAPAN YARN FAIR & 総合展「THE 尾州」“が開催されました。

その後、生地の展示会「テキスタイルフェア(Texitle Fair)」が行われます。テキスタイルフェアが開催されると、服地「クロージングマテリアル(Clothing material)」が決まります。

textile tokyo

出典|– TEXTILE TOKYO – Textile & Material Expo Tokyo | Reed Exhibitions Japan

流れ4.コレクションで発表

トレンドカラー、ヤーン、クロージングマテリアルが決まったら、デザイナーがトレンドの方向性を踏まえた服をデザインし始めます。

テキスタイルフェアの半年後には世界中でファッションウィークが開催されるため、間に合うように先鋭的なデザインが作られていくわけです。

よく聞くパリコレクション(Paris Fashion Week)などの5大コレクション(ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリ、東京)以外にも様々なコレクションが行われます。

もちろん、5大コレクションに登場するデザイナーの作品は先鋭的すぎるため、そのまま大量生産して一般に販売できません。これらはモーターショーで言うところのコンセプトモデルのようなものです。

そのため、各アパレルブランドは、コレクションで発表された作品の特徴的なコンセプトを販売できるレベルに落とし込んで商品化をする……というところまでが、ファッショントレンドが決まる流れです。

スーツのトレンドは予測できる?

コレクションで発表される洋服はあまりにも先鋭的すぎてピンと来ませんが、デザインや素材などの共通点を見つけることで商品化の傾向が見え、最終的に”手に取る人が多い商品がトレンドだった”ということになります。

基本はトレンドブックによって、次のトレンドの傾向がわかると思えば良いでしょう。もちろん、トレンドブックは世界に1つではないため、それぞれ違いはあります。ただ、トレンドとは振り子のように動くものです。

そのため革命的なことが起こらない限り、シルエットなどのディテールが極端から極端に徐々に移っていく基本的な動き(たとえばナロースタイルからビッグシルエットなど)は、いつの時代も変わりません。極端な形に近づくとそこから揺り戻しがあります。

参考|1950年代日本ではIVY|アイビールックはどう理解されていたか

とくに、スーツやジャケットはジャンルが限定されていて、伝統的にある程度決まった形があるため、トレンド予測はそれほど難しくない部類の服だと言えます。

ちなみに、「スーツにトレンドはない!」と言う人もいますが、トレンドを市場の傾向とするならば、時代に即したディテールやシルエットには傾向があると考えても良いでしょう。

また、最近はスーツ業界でもSPAが当たり前になったため、市場ニーズを敏感に捉えた売れ筋商品が多く出回るようになりました。これは本来のファッショントレンドの変化をフルモデルチェンジとするなら、マイナーチェンジのようなものです。

参考|アパレル業界に必須なSPAとは?スーツ小売店とSPAの将来性

わたしが購入した昔々のスーツは、プライベートでまだ着られるんだろうか……さっそくワードローブの奥に追いやられたスーツの中身を確認してみたいと思います。

ちなみに、トレンドは最先端ではありません。最先端はモードであり、トレンドは流行りです。また、トレンドが定着することでスタイルになります。このあたりはまた別途お話したいと思います。

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