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スーツで財布やスマホを持ち歩く
仕事中にスーツを着たまま、オフィスからちょっとコンビニまで買い物に……よくある日常のシーンですね。今の時代、持ち物は財布とスマホが必須、さてみなさんは財布とスマホをどうやって持ち運びますか?
ま、さ、か、両方ともパンツの後ポケットに突っ込んで出かける、なんてことはないですよね?
ジーンズを履いていれば、わたしもそうします。無造作な感じがカジュアルなジーンズと相まって、こなれ感を高めてくれます。でもスーツはシルエットに気をつけて着こなすもので、単純に無造作ではいけません。
「じゃあ、大きく作られたジャケットの腰ポケットは……?」そんなところに財布やスマホを入れたら、スーツが膨らんでシルエットが悪くなりますし、スーツが型崩れして傷んでしまいます。
「だったらカバンを持っていけば……?」たしかに、カバンを持っていけば問題はありません。何年か前から、男性の間でもクラッチバッグが流行っています。最近はレザーで味のあるクラッチバッグの種類も増えました。
ただ…………
男は何でもポケットに突っ込みたい生き物なんです!
大切な物は身につけておかないと不安になるです!
手ぶらが男らしくてかっこいいと思っているんです!
果たして、男性が「スーツをかっこよく着こなしたいこと」と「なるべく手ぶらでいたいこと」を両立させるのは不可能なんでしょうか。
スーツのポケットに物を入れてはいけない理由
カジュアルな服でも、ポケットにたくさん物を入れると膨らみが目立つ場合があります。
どんなスタイルでも、シルエットが崩れるほどポケットに物を入れるのはもったいない着こなしですが、物がたくさんあったら「まぁ仕方ないかな……。」とは思えます。
ただ、スーツはダメです。ポケットが膨らむほど物を入れることはマナー違反です。それは、スーツが「きれいなシルエットを作ること」「シワを作らないこと」をもとに、立ち居振る舞いのマナーが決められているためです。
取引先担当者の腰ポケットがパンパンだと、とても残念に感じます。やってきた営業マンのパンツポケットが膨らんでいたら、「この人の話を聞いて何か得られるんだろうか。」と心配になります。
さらにスーツは、一般的なカジュアル服に比べて耐久性が低い割に高価です。たとえば、スーツのポケットに物を入れると通気性が悪くなって蒸れやすくなります。繊維は湿気に弱く、型崩れの原因になります。
せっかくのスーツが、型崩れしてしまったら……破れてしまったら……どう感じるでしょう。
スーツの型崩れや破れは、カジュアル服のような”味”にはなりません。しかも、簡単なリペアでは元に戻りません。だから、スーツで物を持ち運ぶ際は何らかの対策が必要なんです。
スーツのポケットに何も入れないのは本当?
さて、これだけスーツのポケットについてダメダメ言うと、スーツを着ることが面倒臭くなるかもしれないので少しだけフォローしておきます。
「スーツのポケットになるべく物を入れないのはマナーだけど、ポケットを一切使わないビジネスマンなんていない!」
たまに、「欧米のビジネスマンはスーツのポケットに何も入れない。」などの話を聞きますが、それは誇張して言い過ぎです。必要最低限のシルエットに気をつけて、ポケットを活用しています。そうでなければ不便すぎます。
たとえば、スラントポケット※は、前傾姿勢で馬に乗る際にポケットに物を入れる工夫として発展したポケットです。つまり、スーツは昔からポケットを使う前提があるんです。
※スラントポケットとは、口を斜めに切ったポケットのこと。英国における乗馬用のハッキングポケットが由来。
元々スーツは、モーニングコートをカジュアルに着こなすためにラウンジスーツとして作られた服装です。英国生まれなのでマナーが存在するのは当然としても、日本人が思っているよりスーツはカジュアルに着こなされています。
ビジネスマンの一般的な持ち物とポケットの確認
では、必要最低限のシルエットに気をつけてスーツのポケットを活用する場合、どんな物を入れることができるでしょうか。
ビジネスマンが持ち歩く可能性がある物はこれくらいだと考えて、……さすがに全部は厳しいです。必要なものを選んで、それぞれ検討してみましょう。
- スマホ
- 財布
- 名刺入れ
- キーケース
- 小銭入れ
- ペン
- メモ帳
- ハンカチ
- ポケットティッシュ
- たばこ
つぎに、ジャケットとパンツのポケットがどこにあるかを把握しておきましょう。スーツによってポケットの有無やサイズ、深さなどに違いがあります。
- 1.胸ポケット×1
- シルエットが崩れやすいためチーフ程度しか入れる用途がないポケット
- 2.腰ポケット×2
- 型崩れしやすいため基本的に物を入れてはいけないポケット
- 3.チェンジポケット×1
- 小銭を入れる用途はあるが、実際はジャラジャラして使えないポケット
- 4.内ポケット×2
- 型崩れしない程度の薄い財布などを入れるための実用性の高いポケット
- 5.チケットポケット×1
- 薄い名刺入れや電車のキップ、またはSuicaなどを入れるためのポケット
- 6.ペンポケット×1
- 4-5cm幅の口で、ペンを2本ほど入れるためのポケット
- 7.携帯電話ポケット×1
- ペンポケット横に付けられた携帯(最近はスマホ)用のポケット
- 8.シガーポケット×1
- 喫煙率が減っているため名刺入れやメモ帳を入れるようになったポケット
- 1.サイドポケット×2
- 小物でも入れるとシルエットが崩れる使えないポケット
- 2.バックポケット×2
- 基本はハンカチのみで、間違っても財布を入れてはいけないポケット
- 3.ウォッチポケット×1
- 懐中時計を入れるためのポケットだが、最近は小銭を入れるためコインポケットと呼ばれる
あくまでわたしの感覚だと、それぞれの物は以下のポケットに入れるイメージです。いくつかシガーポケットを含めましたが、このポケットは物を落としやすいので、小銭入れ、名刺入れ、メモ帳を入れるのは少し不安があります。
- スマホ……内ポケット、携帯電話ポケット
- 財布……内ポケット
- 名刺入れ……内ポケット、シガーポケット
- 小銭入れ……内ポケット、携帯電話ポケット、パンツサイドポケット
- ペン……ペンポケット
- メモ帳……内ポケット、シガーポケット
- ハンカチ……パンツバックポケット
- ポケットティッシュ……パンツバックポケット
- たばこ……内ポケット、シガーポケット
やはり、ジャケットの内ポケットが1番使い勝手が良く、シルエットも崩れにくいポケットです。仮に左右の内ポケットにスマホと財布を入れると考えると(もちろん入れ過ぎですが)、他の物は入れられませんね。
スーツで物を持ち歩く方法
では、余った物を持ち歩くにはどうすれば良いでしょうか。
方法1.シンプルに手で持つ
手で持つのは、ある意味シンプルでベストな方法ですが、万が一落としたときにショックが少ない物、他社・他人に迷惑をかけない物が大前提です。そのため、財布、スマホ、名刺入れは”無し”です。
そもそも、手に持つくらいならバッグ持った方が早いですし……。
方法2.クラッチバッグなどに入れる
ということでやはり、クラッチバッグなどに入れることがシンプルで効果的な対策です。バンドホルダー付きのクラッチバッグなら、忘れっぽい人、物を落としやすい人もある程度は回避できるでしょう。
スーツスタイルにボディバッグをしている人も見かけますが、個人的にちょっとアレはないかなぁ……。スーツのシルエットも崩れますし。ウエストポーチはもってのほかです。
方法3.ビジネスホルスターを付ける
最近、ちょっと試してみたいと思ったのがビジネスホルスターです。「あぶない刑事」世代には、タカ(舘ひろし)のホルスター姿がドンピシャかもしれません……。
実はホルスターは、好き嫌いは別にして理にかなっています。ジャケットは、胸から脇にかけて空間ができるからです。内ポケットの使い勝手の良さを考えても、懐に空間があることはわかりますね。
とくに英国調のかっちりしたビジネススーツは、胸の芯地で上半身が大きく自然なドレープを描くため、本来内ポケットはもっと奥(脇側)に作った方が物の収まりは良くなります。
もちろん、余計なものを付けるためジャケットを脱がないことが前提ですが、元々スーツスタイルではジャケットを脱がないこと(ワイシャツを見せないこと)がマナーなので、ビジネスホルスターも”あり”なのかなと……。
元々ヨーロッパではシャツと言えば下着を意味し、現在の下着が登場するまでは今よりも長いシャツテールをボタン留めして下半身を覆っていました。この名残が現在のシャツの形に残っています。そのためシャツ姿は人に見せる必要がない下着姿であり、白無地のみでした。
スーツで物を持ち歩く際の注意点
スーツスタイルで物を持ち歩く方法を考えてみましたが、万人のニーズに応えることは不可能で、やはり自分なりの対策や割り切りが必要です。最後に、物を持ち歩く際の注意点に触れておきましょう。
1.物を少なくする・小さくする
まず、財布の中身は毎日整理しましょう。必要な紙幣と普段使うカード類のみにして、小銭・レシートは整理してください。
二つ折り財布は厚くなるため、薄い長財布がベターです。キーケースも必要な鍵だけにしましょう。また、電子マネーとカードメインにして、財布は小銭入れのみという方法もありでしょう。
2.尖った物・嵩張る物を入れない
固く尖ったものはスーツの繊維を傷つけます。とくにポケットの内側の生地は表生地よりも弱いため、穴が開く原因になります。嵩張る物も、出し入れによって繊維を傷つけます。
3.バッグの使い方に慣れる
すべての物を持ち歩くことは不可能なので、やはりバッグに頼ることになります。スーツスタイルで使えて小柄なのはクラッチバッグ、後はセンス次第でボディバッグやミニショルダー……くらいでしょうか。
普段ジーンズやチノパンを履く人ほど、バッグなどを持たずに手ぶらにしたい気持ちはわかりますが、服装に合わせたバッグを持つことも着こなしの一環です。
しつけ糸を外さないのも一つの手
革靴と同じように、スーツは1日着たら最低2日以上休ませた方が長持ちします。スーツはそれくらい繊細です。
たとえ、総合スーパーのPBスーツでも1万円するため、安い服装だとは言えません。今後良いスーツを買うときのためにも、毎日のケアも含めて普段から気を使った方が良いでしょう。
「そんな面倒なこと気にしたくない!」という人は、せめてクラッチバッグを使ってください。値段はピンきりですが、ブランドなどにこだわらなければ1万円以上はしません(わたしはMICHEL KLEIN hommeで5000円ほど)。
また、「ついつい腰ポケットに物を入れちゃうんだよね。」という人は、スーツをおろしたときにポケットのしつけ糸だけを切らないようにしてもらっても良いでしょう。
しつけ糸が付いていれば、初めからポケットに物は入れられません。男性はポケットが使えると、物を入れたくなる生き物です。
スーツスタイルに限らず、このように服装に合わせた財布やスマホなどの持ち運び方を工夫して、全体で装いを考えてみると服を選ぶことがより楽しくなると思います。
それにしても、やっぱりビジネスホルスターが気になる……。