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普段のワイシャツの選び方は?
みなさんは普段、仕事のときにどのようなシャツを着るでしょうか。一般的にビジネスマンは白のシャツ(ワイシャツ)を着るものですが、そのシャツはどのような基準で選んだものでしょうか。
業界や仕事の立ち位置によって、シャツの選び方は異なります。たとえば、原則白無地でなければいけない職場もあれば、紫やピンク、ストライプやチェックなどの色柄が許容される職場、またカフス型や襟の形で良し悪しが分かれる職場もあります。
よく「サラリーマンはきちんとワイシャツを着なければいけない。」などと言われますが、何をもってきちんとしている、きちんとしていないと分ければ良いのでしょう。
その分け方の1つに、「ワイシャツ(ドレスシャツ)※」か「カジュアルシャツ」かという考え方があります。
※ワイシャツはホワイトシャツが訛った言い方なので、日本人が認識するワイシャツは海外ではドレスシャツと言う。
参考|ワイシャツ・Yシャツ・カッターシャツの違いと名前の由来
今回は、ワイシャツ(ドレスシャツ)とカジュアルシャツ(スポーツシャツ)の違いについてお話したいと思います。
ドレスシャツとカジュアルシャツの違い
ワイシャツ(ドレスシャツ)とカジュアルシャツ(スポーツシャツ)の違いは、明確なようで実は曖昧です。
というのも、ドレスシャツの一部に遊びとしてカジュアルな要素を追加したシャツ、または動きやすい要素を追加したシャツがカジュアルシャツであり、その要素が多いほどカジュアル感が強くなっていくものだからです。
たとえば、もともとボタンダウンシャツはカジュアルシャツとして作られましたが、現在はビジネスシーンでも見かけることからドレスシャツだと言う人もいます。
また、ピンタックのウイングカラーシャツをもっともフォーマルなドレスシャツとして、それ以外は正式にはドレスシャツだとは言えないという人もいるでしょう(日本では一般的にフォーマルシャツは分けられている)。
もちろん、特別な仕事でもない限り、普段からピンタックのウイングカラーシャツを着る人はいません。そのため、まず認識すべきは、仕事に適していて、失礼に当たらないノーマルなドレスシャツが何であるかを理解し、何がカジュアルな要素かを把握することです。
ドレスシャツをカジュアルダウンする要素
シャツのカジュアル要素1.襟の形状
ドレスシャツには台襟があり、襟にはカラーキーパーが入っているため、襟に硬さとハリがあって自立しやすいディテールをしています。これは、ネクタイを巻いたときに窮屈でなく、自然に仕上がるためです。
ドレスシャツの襟は、一般的にジャケットを着たときに襟を1.5cmほど覗かせるため、襟高は4-4.5cmほど必要になります。
一方、カジュアルシャツの襟はドレスシャツに比べて台襟がない、または小さめで、襟には芯やカラーキーパーが入っていないため柔らかく、ペタッと寝た襟形をしています。
シャツのカジュアル要素2.裾の形状
ドレスシャツは元々下着が変形した作りのため、前後のシャツテールが長く、タックイン(パンツイン)したときに裾が出にくい形状です。
一方、カジュアルシャツはタックアウトで着ることを考慮した作りのため、シャツテールが短かったり、水平にカットされています。
元々ヨーロッパではシャツは下着を意味し、現在の下着が登場するまでは今よりも長いシャツテールを前後でボタン留めして、下半身を覆っていました。この名残が現在のシャツの形に残っています。
シャツのカジュアル要素3.生地素材
ドレスシャツの素材の多くはシルク100%、コットン100%、またはポリエステル混などで、生地はブロードの光沢がある仕様、またはオックスフォードの平織、一部綾織がメインです。
一方、カジュアルシャツにはコットン、シルク、ポリエステル以外に、季節感が出るリネンやニットなども使われます。また、生地はフランネル、デニム、シャンブレー、ダンガリー、鹿の子などに織られます。
ちなみに、オックスフォードは繊維が太く生地の風合いがゴツゴツして粗いため、カジュアル要素の1つだと判断される場合があります。
シャツのカジュアル要素4.襟の形状
シャツの襟(カラー)の形は様々あり、時代によっても受け止められ方が変わりますが、総じてボタンダウンカラー、イタリアンカラー、ドゥエボットーニやトレボットーニなどがカジュアルな襟形になります。
ボタンダウンはスポーツシャツ、イタリアンカラーはネクタイをしないシャツ、ドゥエボットーニやトレボットーニも基本的にはネクタイをせずに着るためのシャツです。
シャツのカジュアル要素5.色柄
ドレスシャツの基本カラーは、白またはサックスブルーです。その他にはペールトーンのピンク、黄色、紫などがあり、色が濃くなるほどカジュアル感が強くなります。
ドレスシャツの基本柄は、無地かピンストライプです。ストライプのピッチが広く・太くなるほど、ライン色が濃くなるほどカジュアル感が強くなります。また、基本的にストライプはビジネス仕様、チェックはカジュアル仕様とみなされます。
ちなみに、クレリックシャツ(カラーセパレーテッドシャツ)がカジュアルと言う人もいますが、クレリックは元々牧師や聖職者を意味し、ガウンの襟から白いシャツが見えたことからこのような名前が付いています。
そのため、使う色柄にもよりますが、クレリックシャツはドレッシーなシャツだと認識しても良いでしょう。
シャツのカジュアル要素6.フロントボタン
ドレスシャツのフロントボタンの素材は主に貝(白蝶貝など)、またはプラスチックで、基本色は白です。
一方、カジュアルシャツのボタンは素材も色も様々です。ボタンの主張が強く、カガリ糸も含めて目立つ色はカジュアルに見られます。
シャツのカジュアル要素7.カフス型と袖の長さ
カフス型でドレスシャツ、カジュアルシャツを分けることはありませんが、カフリンクスで留める方がフォーマルに近づくとされます。そのため、もっともカジュアルなカフス型はシングルカフスということになります。
参考|カフスボタン、カフリンクス、カフスの違いは?正しい付け方は?
また、袖の長さは立って手を垂直におろした際に、手首の骨の出っ張り(茎状突起)から指二本分の位置にくるように調整します。つまり、ドレスシャツは長袖が前提で、半袖、五分袖、七分袖などは当然カジュアルです。
カジュアル要素8.胸ポケット
元々ドレスシャツはスリーピースのベストの下に着る下着なので、胸ポケットは必要ありません。そのため、シャツに胸ポケットがある方が、カジュアルに近づきます。
シャツのカジュアル要素をどう考えれば良いのか
シンプルなドレスシャツは、以下のような感じです。このドレスシャツをベースとして、追加するカジュアル要素はどう考えれば良いのでしょう。
ドレスシャツとカジュアルシャツを分けるもっとも強い要素は、やはり見た目でわかる素材と生地(織り方)になると思います。とくに、リネンやニット素材を使うとすぐにわかります。
次に、襟の形状ですね。ドレスシャツは基本的にネクタイを締める前提で作られているため台襟が高く、襟の見た目が柔らかいとカジュアルシャツに見えます。一見、ビシッと見えてもカジュアル要素が強いのは、ボタンダウンなど襟の形をカジュアルに変えた場合です。
また、シルエットはドレッシーでも短いシャツテールは、着こなし次第でタックイン・タックアウトでドレスシャツとしてもカジュアルシャツとしても着られます。写真のドレスシャツはテールが長いため、タックアウトには向いていません。
反対に、色柄だけでドレスシャツとカジュアルシャツを分けることはナンセンスです。たしかに派手なシャツはカジュアル寄りですが、カジュアルに着こなせる要素が伴っていなければ、単純に目立つだけのアンバランスなドレスシャツになってしまいます。
このようにドレスシャツにカジュアル要素を加えることで、ビジネス仕様からプライベート仕様であるラフな着こなしに変化していくわけです。
ドレス・カジュアルの違いで個性的な着こなし
さて、これだけドレス・カジュアルの違いがわかれば、何ができるのか--。
それは、ドレスシャツの要素をすべて知りつつ、ワンポイント、ツーポイントのさり気ない外しを加えるなど、TPOに合わせた着こなしができるということ。つまり、シャツを使ってシーン別に自分なりの個性を出せるということです。
スーツスタイルにしろ、セパレートスタイル(ジャケパン)にしろ、Vゾーンを飾るシャツの存在感は大きいため、シャツの扱いドレス・カジュアルでがちぐはぐだと、全体のバランスがおかしくなります。
とくに、夏場はシャツを見られる機会が多い時期です。どのようなスタイルで、どのようにシャツが見られるかを考えれば、日本人がクールビズで着る”半袖ワイシャツ”の着こなしが如何におかしいかわかるはず……。
参考|ビジネスで半袖ワイシャツはダサい?クールビズのおすすめシャツは
最後に注意点として、どれだけ基本に忠実なドレスシャツを着ていても、また上手に外したカジュアルダウンな着こなしをしても、シャツのサイズが合っていなければ台無しです。
シャツもスーツ同様、肩で着ることが基本です(正確には肩で吊って身体に沿ってドレープしている)。まずは既製のシャツを探してみて、それから自分に合うオーダー(カスタム)シャツに挑戦してみても良いでしょう。