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シャツ袖の留め方は?
みなさんは、普段シャツを着たときに袖口に付いたボタンで袖を留めていますか?それとも、カフスボタンで袖を留めていますか?
「え?カフスボタンって、結婚式とか特別なときに付けるものじゃないの?」いいえ、カフスボタンは結婚式や二次会だけでなく、普段のビジネスシーンでも使えます。
わたしは特定のシャツを着るとき以外は、ほぼ毎日必ず使っています。10年以上付けているので、カフスボタンがないと手首が寂しくて不安になります。
本切羽のときもお話しましたが、わたしはどうやら手首周りのディテールや装飾が好きみたいです。首、手首、足首は目立つ部位ですね。
参考|本切羽と開き見せの違いは?スーツの袖ボタンは本切羽が良い?
そんなカフスボタンには、金属製のボタン、革や編地のくるみボタンなど色々な種類があります。カジュアルっぽくて仕事で使うには抵抗があるという人もいますが、実は全く逆でカフスボタンはとてもドレッシーなアイテムです。
ところで、今「カフスボタン」としましたが、他に「カフス」や「カフリンクス」という呼び方も聞いたことがあるでしょう。カフスボタン、カフス、カフリンクスは、呼び方が違うだけで同じものなんでしょうか。それとも違いがあるのでしょうか。
今回は、カフスボタン、カフス、カフリンクスの違いと正しい付け方などについてお話したいと思います。
カフスボタンとは
さて、最初に言ってしまいますが、正しい名称はカフスボタンではなく、「カフリンクス(cuff links)」です。カフスボタンは和製英語、カフス(cuffs)はシャツなどの袖口を意味するため、使い方が間違っています。
カフリンクスとは、ドレスシャツの袖口を留める服飾用の留め具のこと、つまり”カフ(袖)”を”リンク(つなぐ)”するための道具ということですね。元々は、ボタンができる前の袖の留め具の名残のため、現在のカフリンクスの役割は装飾です。
カフリンクス(カフスボタン)の歴史
カフリンクスは、もともと衣服の袖口をレースやリボンで縛って飾っていたことが起源で、古代エジプト時代にはすでにそのような文化はあったようです。
袖口を金属製の鎖で留めるようになったのは、17世紀フランスのルイ14世(1638年-1715年)下のことで、金属製のカフリンクスは、程なくしてフランスからイギリスにも伝わりました。
以下のカフリンクスは1662年のもので、英国王チャールズ2世(1630年-1685年)の結婚を記念して作られたものだそうです。この当時から今と変わらない見た目のカフリンクスが存在していたことがわかります。
出典|Histoire des boutons de manchette – Tout savoir sur les boutons de manchettes – Cravate-Avenue.com
当時のカフリンクスは金銀などの貴金属で作られていたため、1850年ごろまでは王侯貴族が独占的につけていました。カフリンクスを付けること自体が、特権階級の証だったわけです。
その後、カフリンクスの材料には真鍮(しんちゅう)が使われるようになり、産業革命によって大量生産が可能になると、徐々に一般市民の間にも広まっていきました。
ちなみに、カフリンクスはフランス語で「ブトンドゥモンシェット(bouton de manchette)」と言います。
カフリンクスの種類
1.スウィヴル式(レバー式)
スウィヴル式は、現在もっとも多いカフリンクスの種類で、ボタンホールに通した後に留め具のレバーを捻って袖口に固定するタイプです。
2.スナップ式
スナップ式カフリンクスは、カフリンクスがピアスのポストとキャッチのようにふたつに分かれている種類で、ボタンホールに通した後にスナップボタンをはめて固定するタイプです。
3.固定式
固定式カフリンクスは、全体が固定された棒状で両端がボタンのように大きくなったカフリンクスの種類で、ボタンホールに両端を通して固定します。
4.チェーン式
チェーン式カフリンクスは、固定式の棒部分がチェーンになったカフリンクスの種類で、同じくボタンホールに両端を通して固定するタイプです。
5.紐式
紐式カフリンクスは、チェーン式のチェーンが紐やゴムになったカフリンクスの種類で、同じくボタンホールに両端を通して固定するタイプです。
カフリンクスの付け方
カフリンクスは、どの種類も基本的な使い方は同じで、「カフをリンクする」だけです。では、もっとも多いスウィヴル式(レバー式)を付けてみましょう。
- カフリンクスを付ける袖にはボタンホールが2つあります。そのボタンホールが付いた裏地同士を拝み合わせにします。
- 手の甲を上に向けて、カフリンクスを2つのボタンホールに上から通します。
- ボタンホールから出たカフリンクスのレバーを捻って、カフリンクスを留めます。
以上、付け方は簡単ですね。注意点としては、表裏逆にカフリンクスを付けないこと、そして袖は裏地と表地を合わせないこと。
カフリンクスが付けられる袖・付けられない袖
カフリンクスは付けられる袖、付けられない袖があります。カフリンクスを付けたい人は、カフリンクスに見合ったカフス型のシャツを用意しましょう。
まず、今着ているシャツの袖口を見てください。ボタンとボタンホールが1つずつ、ボタン1つとボタンホールが2つ、ボタンホールが2つのどれかだと思います。
カフリンクスが付けられる袖
コンバーチブルカフス
コンバーチブルカフスは、片方にボタン1つとボタンホールが1つ、もう片方にボタンホールが1つ付いているカフスのことです。
袖口は、カフリンクスでもボタンでも留められます。コンバーチブルカフスは日本でよく見かけるカフスですが、海外に行くと”ダサい”扱いされるので気をつけてください。
テニスカフス
テニスカフスは、片方にボタンホールが1つ、もう片方にもボタンホールが1つ付いているカフスのことです。
袖にはボタンがなく、カフリンクスを付けるために作られたカフスです。以前にテニスカフスのシャツを作ったことがありますが、カフリンクスを失くして困ったことがありました。
フレンチカフス(ダブルカフス)
フレンチカフスは、片方にボタンホールが2つ、もう片方にもボタンホールが2つ付いているカフスですが、袖口が長いため二重に折り返してボタンホールを合わせて、カフリンクスで留めます。
カフリンクスが付けられない袖
シングルカフス
シングルカフスは、片方にボタン、片方にボタンホールが1つずつ付いているカフのことです。
シングルカフスはボタンで留めるため、カフリンクスを付けられません。カフリンクスを意識したことがない人には、もっとも一般的な袖型です。
ターンナップカフス
ターンナップカフスは、片方にボタン、片方にボタンホールが1つずつ付いているカフで、フレンチカフスのように袖口を折り返してボタンで留める袖型です。
カフリンクスはどんなシーンにも合う
カフリンクスは、それほど高価なものではありません。スーツ量販店やツープライスショップなら、3000-4000円台から購入できるはずです。
1度カフリンクスを付けると、袖の拝み合わせによって手首が固定される感覚が病みつきになります。しかも、袖口からちらっと見えるカフリンクスの金属や拝み合わせの生地の質感が良く、付けている本人が1番満足感を覚えるはずです。
フランスでは、カフリンクスは男性が着用できる唯一の宝石だと考えられています。そんなアピールポイントを公然と飾らないことは、とてももったいないことです。
しかも、何となく袖を見せたくてオーバーリアクションになるため、人に会うと緊張する人には、自分を出すきっかけに使える……かもしれません。
もちろん、ビジネスシーンでカフリンクスを付けづらくても、結婚式や二次会、ジャケットを着た食事やパーティーに付けているだけで、コーディネートの質感が上がることは間違いありません。
初めてカフリンクスに挑戦する人は、質感が控えめなマットなメタル素材のものから試してみてはいかがでしょうか。