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Jun.20

パンツ、ズボン、スラックス、トラウザーズ、ボトムスの違いとは

Written by伊藤進一郎

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

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ズボンとパンツはどっちが正解?

ベストにジレ、ウエストコート、チョッキなどの呼び方があるように、ファッションアイテムの名称は国や時代によって異なります。

様々な面で西欧文化に影響を受けている日本は、時代によって都合良く各国のトレンドを取り入れているため、その時々でアイテムの呼称が変わることは仕方ありません。

とくに、アパレル業界では「新しい呼び方=売りたいもの」という戦略があるため、消費者側も名称を1つに固定できないという面倒な部分があります。

ところで、男性のみなさんが仕事の際にジャケットと共に下半身に履く外着の衣類……まぁズボンのことですが、これを普段何と呼んでいるでしょうか。ざっとパンツ、ズボン、スラックス、トラウザーズ、ボトムス……などの言い方が思いつきますね。

さて、これらの呼び方の違いに意味はあるのでしょうか。それとも、やはりすべて同じものを指すのでしょうか。

今回は、パンツ、ズボン、スラックス、トラウザーズ、ボトムスの違いと使い分けについてお話したいと思います。

パンツ(pants)とは

現在、ズボンの呼び方でもっとも使われる名称は「パンツ」だと思います。日本語の難しいところですが、”パ”にアクセントを置くと下着の意味になり、アクセントがないとズボンの意味になります。

パンツ(pants)はアメリカ英語でズボンを意味し、下着類はアンダーウェア(underwear)と呼びます。

日本の年配者の中には、「パンツは下着のことだろ。」とパンツ呼びをしない人もいますが、実際は下着をパンツと呼ぶ方がおかしいんです。

たしかに多くのズボン類は、チノパンツ、カーゴパンツ、スキニーパンツ、テーパードパンツ、クロップドパンツ、ガウチョパンツ、バギーパンツなど「パンツ」が付きますね。

ちなみにアメリカでは、女性用・女児用の下着を「panties」と呼ぶことがあり、そこから1980年ごろまでは日本でも女性の下着をパンティーと呼んでいました。

さらに、そこから派生して男性の下着をパンツ、その後女性の下着もパンツという呼び方が一般的になりました。

また、女性の下着をショーツ(shorts)と呼ぶこともありますが、これはショートパンツ(股下10cmほどのズボン)のことで、アメリカでは下着を意味しません。

注意点として、イギリス英語ではパンツは下着を意味するそうなので、場合によっては使い分けが必要になります(面倒ですね……)。

ズボン(洋袴)とは

ズボン(洋袴)とは日本独自の呼び方で、他国では使われません。基本的には、二股に分かれた筒状の布に足を通して下着の上に履き、腰部分をベルトやサスペンダーで留めた衣服を言います。

ズボンという名称の語源ですが、フランス語でペチコートを表すジュポン(jupon)から来た説、足をズボンと入れて履いたことから来た説などがあります。

どちらにしても19世紀の幕末から明治初期にかけて、これまで日本になかった西洋式の履物であるズボンが伝わった際に、その呼び方が定着したようです。

この日本式のズボンという呼び方が、アメリカ式のパンツ呼びで広く定着したのは、ここ20-30年ほどのことではないかと思います。

少なくともわたしが小さいころは”ズボン”と聞くことが多く、自分で服を買うようになったころには”パンツ”でした。わたしが中学生ごろにバギーパンツやペインターパンツが流行っていたので、そのあたりが大きな転換時期なんでしょうか。

あ、そう言えば今でも子供に対しては、「早くズボン履きなさい。」って言いますね……。まだシーンによって、ズボンとパンツを使い分けている気がします。

スラックス(slacks)とは

スラックス(slacks)とは、アメリカ英語でゆとりのある長ズボンを意味します。スラック(slack)には「ゆるい、たるんだ」という意味があるため、細身で締めつけがあるズボンはスラックスと呼びません。

「じゃあアメリカントラディショナルなスーツは元々ゆとりがあるから、スラックスはやっぱりスーツのズボンなんだ。」と思うかもしれませんが違います。

スラックスは、上下揃いではない長ズボンのことです。つまり、スーツのスボンはスラックスとは呼ばないんです。

元々スラックスは制服の意味合いが強かったようですが、現在の使い方はそれほど厳密ではく、文脈次第で主にスーツ以外のズボン類に対して使うことが一般的です。

アメリカでは、スーツとして履くズボンを以下のように呼びます。

  • スーツパンツ(Suit Pants)
  • ドレスパンツ(Dress Pants)
  • ドレススラックス(Dress Slacks)

もっともわかりやすい呼称は「スーツパンツ」ですね。以前お話した通り、スーツの上着を「スーツジャケット」と呼ぶことを考えると納得いくはずです。

参考|スーツの上着の正しい名前は?背広・ジャケット・ブレザーとの違いは

トラウザーズ(trousers)とは

最近よく聞くトラウザーズ(trousers)ですが、こちらはイギリス英語で、主にスーツに使う長ズボンやドレッシーな単体の長ズボンを意味します。

トラウザーズはアメリカでも(一部で)使われているため、「トラウザーズ=スーツの長ズボンや細身できれいめのズボン」と認識しておけば間違いではありません。

もう一度言いますが、スラックス(slacks)はアメリカ英語で主にスーツ以外に使う長ズボンのこと、トラウザーズは主にスーツに使う長ズボンや細身できれいめのズボンのことです。

つまり、トラウザーズはスラックスに比べてドレッシーで、スラックスはスポーティーな長ズボンだということになります。

ボトムス(bottoms)とは

最後にボトムスです。ボトム(bottom)の意味はわかりますね。「下部、底面」などの意味があるため、転じてボトムス(bottoms)は下半身に身に付ける衣服類を表します。

ただし、ボトムスが特定のアイテムやスタイルを表すわけではありませんし、ズボンの形状や長さ、スカートかどうかも関係ありません。

下半身に身につける衣服類は、すべてボトムスです。対して、上半身に身につける衣服類はトップスです。ボトムスもトップスも対応する日本語独自の言い方はありません(かろうじて上着とトップスは似ていますが)。

さて、結局スーツの下に履くものは何と呼べば良いのか……。

日本にいる限りそこまで意識する必要はありませんが、正式に呼ぶならトラウザーズ、またはスーツパンツあたりが無難でしょうか。まぁ、スラックスでも通じるとは思います。

様々なズボンの呼び方

パンツ
ズボンを表すアメリカ英語で、二股に分かれた履物はパンツに分類される。ただし、イギリス英語では下着を意味する。
ズボン
日本独自の呼び方で、上記パンツと同様の意味で使用される。現在でも一部に使われている。
スラックス
アメリカ英語でゆとりのある長ズボンを意味する。基本的にスーツのズボンは、スラックスには該当しない。
トラウザーズ
イギリス英語でスーツに使う長ズボンやドレッシーな単体の長ズボンを意味する。
ボトムス
形状や長さなど関係なく、下半身に身につける衣服類はすべてボトムスになる。

もちろん、このような用語の意味は自分だけが理解していても、相手が理解していなければ会話が成り立たないので、シーンに合わせて使い分ける必要があるかもしれません。

面倒ですが、今の時代はとくに世代間ギャップが大きいため、言葉の使い所を間違えて、「え?(おじさん?)」と言われないように気をつけてください。

ちなみに、パンツやスカートには正しくは”穿く”という漢字を使いますが、”穿く”は常用漢字ではないため、新聞や公文書などでは代替として”履く”が使われます。”履く”は靴やサンダルなどの履物に使われる漢字です。

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Be a man dressing to suit.