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スーツ販売店と言えば?
わたしが初めてスーツを購入したのは18歳のとき、大学の入学式に備えてでした。
当時はツープライススーツショップが登場して間もないころで、たしかThe@SUPER SUITS STORE(ザ・スーパースーツストア)か、THE SUIT COMPANY(ザ・スーツカンパニー)でスーツを買った……ような気がします。
あまりスーツを知らない人がスーツ販売店でまずイメージするのは、「スーツのAOKI」「洋服の青山」「紳士服のコナカ」「スーツのはるやま」という四大スーツ量販店ですね。
参考|スーツ量販店のAOKI・青山・コナカ・はるやまの違いと比較
次に思い浮かべるのが、上記の「ツープライススーツショップ」だと思います。ツープライススーツショップは、街中でよく見かける割に詳しいことは知らず、単純にスーツ販売店の1つだと認識している人も多いはずです(まぁその通りなのですが)。
今では業態もフレキシブルに変わってきましたが、当時はビジネスモデルの斬新さや価格の割にかっこいいデザインから、爆発的に店舗展開が進んでいました。
では、ツープライススーツショップとはどのような形態のスーツ販売店を言うのでしょうか。また、現在のツープライススーツショップはどのような特徴を持っているのでしょうか。
今回は、ツープライススーツショップの特徴と大手ツープライススーツショップの比較をしてみたいと思います。
ツープライススーツショップとは
ツープライススーツショップとは、スーツ量販店によくある多価格設定を排除し、19000円と28000円など2つの設定価格からスーツを選べるスーツ販売店のことです。ただし、現在は3つ以上の価格設定が主流になり、それ以上の価格設定を設ける取扱店もあります(ツープライスの意味が……)。
もともとツープライススーツショップは、京都の1テーラー「紳士服中西(後のオンリー)」が事業拡大し、SPA業態を取り入れて1999年に「The @ SUPER SUITS STORE(ザ・スーパースーツストア)」をオープンさせたことから始まります。
参考|アパレル業界に必須なSPAとは?スーツ小売店とSPAの将来性
スーツのシルエットは1960年代、1970年代、1980年代が最も抑揚があった時期だと思います(詳細は別途お話します)。時代はまわると言いますが、1970年代(サタデー・ナイト・フィーバーのジョン・トラボルタのイメージ)、1980年代(バブリーな不動産屋のイメージ)のスーツのシルエットは二度と来ないのではないかなと……。
その後、1990年代後半は大きく崩れたスーツのシルエットからシンプルでスタイリッシュなシルエットへの回帰が見られた時期で、徐々にトラディショナルなシルエットに近づいていきます。
また、それまでのスーツと言えばAOKIや青山などスーツ量販店がメインで、当時は取り扱うスーツもブラックスーツや礼服、略礼服が多く、サイズ感も今より緩やかだったため、「スーツはおじさんが着るもの」というイメージがありました。
そこで、ザ・スーパースーツストアはターゲット層を20代前半から30代後半の若者に据え、テーラーのノウハウとSPAによって、流行のスーツをわかりやすい価格で、これまでよりも安価に販売できるビジネスモデルを作り上げました。
ツープライススーツショップの特徴
ツープライススーツショップの特徴を挙げると以下になりますが、現在はコモディティ化もあって、各ブランドが独自色を強めつつあります。
- ターゲットは20代前半から30代後半
- 19000円、28000円という2択の価格設定
- SPA業態による効率的な生産体制
- 郊外ではなく駅前や街中での店舗展開
- 身長別(5cm)・体型別(※Y体・A体・AB体など)陳列
※スーツサイズを5cm刻みの身長別、「Y体・A体・AB体」などの体型別にすることで、人件費を削除しつつ顧客にわかりやすい販売方法を提示した。サイズ表記は各ショップブランドによって異なる。
五大ツープライススーツショップ
ツープライススーツショップ市場は、ほぼ以下の5つのブランドで占められており、オンリー以外の運営元は四大スーツ量販店(グループ企業含む)となっています。
- ORIHICA|AOKI
- The@SUPER SUITS STORE|オンリー
- THE SUITS COMPANY|青山商事
- P.S.FA|はるやま商事
- SUIT SELECT|コナカ
1.ORIHICA(オリヒカ)
2000年11月 AOKIがスーツダイレクトを開始
2004年09月 ORIHICA(オリヒカ)に刷新
ORIHICAとして135店舗展開(2018年3月現在)
AOKIが展開する「オリヒカ」は、元々2000年にスタートした「スーツダイレクト」が、2004年に刷新されたブランドです。
オリヒカでは、「マルベリー(Mulberry)」や「マッキントッシュ(MACKINTOSH)」でクリエイティブディレクターを務めたサリーム・ダロンヴィル(Saleem D’Aronville)氏を迎えることで、国内外の異業種デザイナーとコラボ商品を展開しています。
スーツの価格帯は元々18000円、28000円の2ラインでしたが、オリヒカ刷新後に主にイタリア「FINTES(フィンテス)」「REDA(レダ)」「TRABALDO TOGNA(トラバルト トーニャ)」「CANONICO(カノニコ)」「MARZOTTO(マルゾット)」の生地を使用した38000円のインポートラインを増やしています。
参考|ORIHICA|AOKI
2.The@SUPER SUITS STORE(ザ・スーパースーツストア)
1999年10月 オンリーがザ・スーパースーツストアを開始
ONLYとして44店舗展開(2018年3月現在)
前述した通り、初めてツープライススーツショップを開始したのは、オンリーが展開する「ザ・スーパースーツストア」です。
スーツの価格帯は28000円と38000円のラインに加えて、48000円のプレミアムライン(イタリア「CANONICO(カノニコ)」「MARZOTTO(マルゾット)」生地を使用)があります。
現在は「The @ SUPER SUITS STORE」という看板に替えて、「ONLY(オンリー)」というブランド名の看板を掲げているため、まだ市場認知度は足りていないかもしれません。
3.THE SUITS COMPANY(ザ・スーツカンパニー)
2000年11月 青山商事がザ・スーツカンパニーを開始
THE SUIT COMPANYとして67店舗展開(2018年3月現在)
好調で目新しいザ・スーパースーツストアに追従する形で、2000年11月に青山商事が「ザ・スーツカンパニー」をスタートしました。現在はイギリスのモス・ブロス社と提携して、生地の買い付けなども行っています。
元々のスーツの価格帯は19000円、28000円の2ラインでしたが、現在はザ・スーツカンパニーラインで19000円、28000円、33000円、38000円、43000円、46000円、ユニバーサルランゲージ(UNIVERSAL LANGUAGE)ラインで48000円、58000円、68000円、78000円……と様々です。
生地は、ザ・スーツカンパニーラインではイタリア「CARLO BARBERA(カルロ バルベラ)」「E.THOMAS(イー・トーマス)」「CANONICO(カノニコ)」などが一部使われ、ユニバーサルランゲージラインでは日本「MIYUKI KEORI(御幸毛織)」、フランス「DORMEUIL(ドーメル)」、イタリア「Ermenegildo Zegna(エルメネジルド ゼニア)」「Loro Piana(ロロ ピアーナ)」「CERRUTI(チェルッティ)」「CANONICO(カノニコ)」「E.THOMAS(イー・トーマス)」などが使われています。
4.P.S.FA(パーフェクト・スーツ・ファクトリー)
2000年11月 はるやま商事がパーフェクト・スーツ・ファクトリーを開始
P.S.FAとして89店舗展開(2018年3月現在)
「パーフェクト・スーツ・ファクトリー」は、はるやま商事が展開するツープライススーツブランドです。
スーツの価格帯は19000円、29000円、34000円に加えて、イタリア「LANIFICIO DI TOLLEGNO(ラニフィシオ デ・トレーニョ)」「ANGELICO(アンジェリコ)」「CANONICO(カノニコ)」「CABALANE(キャバラネ)」「REDA(レダ)」「FINTES(フィンテス)」などのインポートブランド生地を使用した39000円、44000円、49000円のプレミアムラインを揃えています。
参考|P.S.FA(Perfect Suit FActory)|はるやま商事
5.SUIT SELECT(スーツセレクト)
2001年04月 コナカがスーツセレクト21を開始
2007年06月 スーツセレクトとして刷新
SUITSELECTとして166店舗展開(2018年1月現在)
ザ・スーツカンパニー、オリヒカ、パーフェクト・スーツ・ファクトリーから約半年遅れた2001年、コナカが「スーツセレクト21」をスタートし、2007年にはトータルプロデューサーとして佐藤可士和氏を迎え入れ、「スーツセレクト」に刷新されます。
スーツの価格帯は18000円、28000円、38000円で全体的に細身のスーツが多く、トラディショナルによったラインナップに見えます。ラインナップが少ないため、選びやすいことは顧客メリットと言えます。
ツープライススーツショップの満足度
では、これだけあるツープライススーツショップの中から、どこでスーツを買うのが良いのでしょうか。
2017年5月に利用者2,594名を対象に行われた「オリコン日本顧客満足度ランキング&アナリシス」のスーツに関する調査を元に、ツープライススーツショップ各社に対する顧客満足度を見てみましょう。
出典|スーツショップ満足度ランキング!今春の1着、どこで買う? | オリコン日本顧客満足度ランキング&アナリシス | ダイヤモンド・オンライン
参考|オリコン スーツショップ満足度ランキング|比較・クチコミ・評判 2017年版
この調査を見る限り、オリヒカがもっとも満足度が高く、ザ・スーパースーツストアがもっとも満足度が低いという結果です(5大ツープライススーツショップの中では)。
ただし、満足度に大きな差があるわけではなく、今後の展開次第で順位がどう変化するかはわかりません。
ちなみに、調査対象が重視した項目は以下の通りです。わたしも個人的には上位4つの重視項目が同じです(店員の接客力とお直しサービスは気になるところですが)。
商品の質|24.85%
コストパフォーマンス|12.57%
利用のしやすさ|11.19%
商品の豊富さ|9.93%
特典・キャンペーン|7.6%
コーディネート力|6.88%
店員の接客力|6.67%
店の雰囲気・清潔さ|6.26%
お直しサービス|6.08%
商品の探しやすさ|5.86%
試着室の使いやすさ|2.1%
参考|コストパフォーマンス|オリコン スーツショップ満足度ランキング|比較・クチコミ・評判 2017年版
ツープライススーツショップの今後
さて、わたしが初めてスーツを購入した20年近く前に比べて、安価で手軽にかっこいいスーツを着ることが当たり前になった現在、ツープライススーツショップの今後はどうなっていくのでしょうか。
ツープライススーツショップが、サービス開始当初と現在で大きく変わったことは以下の6つです。
- 品質が良くなった
- 価格帯が増えた
- セールや割引が増えた
- パターンオーダーを追加した
- 女性用スーツが増えた
- 地方店が増えた
ツープライススーツショップは、利用者が増えて売上が拡大することで品質の良い生地を大量に買い付け、パートナーシップを組む人や企業が増えてサービスが充実し、店舗も増えていきました。
店舗が増え、商品の質が高くなるとサービスはコモディティ化します。つまり、より多くの顧客開拓が必要になるわけです。顧客開拓のためには同一地域での販売競争に勝たなければいけません。
結果として、地方のショッピングモールでさえ競合店が2-3店混在することは珍しくなくなりました。
今振り返ってみると、ツープライススーツショップのこのような爆発的な広がりのおかげで、オフィス街のスーツシルエットが今風に変わったと言っても過言ではありません。
現在は、他社と違いを作るためにパターンオーダーやカジュアルスーツ、レディーススーツというジャンルを増やしているものの、メインの売上を下げるわけにはいかないため、広告に力を入れてセールや割引という販売方法も取り入れています。
かくして、ツープライススーツショップは4大スーツ量販店の熾烈な競争と同じような構図になってしまいました。
今後、ツープライススーツショップがどうなるのか……明確な予想はできませんが、喫緊でカニバリズムが起きないよう各社コントロールしていることだけは間違いありません。