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Apr.25

スーツを着る意味がわからない…スーツ文化の必要性は?

Written by伊藤進一郎

この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。

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なぜ仕事でスーツを着るのか

「なぜ仕事をするときにスーツを着なければいけないの?」
「なぜかしこまった場所でスーツを着なければいけないの?」

時と場合によりますが、スーツを着る人は「好きでスーツを着ている」「仕方なくスーツを着ている」という2種類に分かれると思います。わたしの肌感覚で男性のみを考えると、前者が1……後者が9というところでしょうか。

マイナビが2015年に会員300人の男女を対象に行なったアンケートによると、「スーツで仕事をするべきだと思いますか?」の問に対して「はい」は3割未満、「いいえ」は6割以上という結果が出ています。

  • はい|28.7%
  • いいえ|64.3%
  • その他|7.0%

参考|スーツで仕事をするべき? – 6割が否定派 (1) 「これほど無駄な文化はない」という批判も | マイナビニュース

仕事でスーツを着ることに違和感を感じる人は、「高価だし、窮屈だし、疲れるし、暑いし、生産性悪いし……とにかくいつでもスーツ着ろ!はやりすぎじゃない?」と思っているようです。

つまり、スーツを着ることに疑問を抱いている人が6割いるにもかかわらず、あらゆるシーンでスーツ文化は未だに根強く残っています。これはなぜなのでしょうか。

今回は、仕事でスーツが定着している理由、スーツ文化の必要性についてお話したいと思います。

スーツを着る理由1.慣習で正装とされているため

スーツ(礼服などを含む)は、一般的にマナーを伴ったかしこまった服装とされています。ただ、これは法律で決まっているわけではなく慣習です。つまり、ある人に言わせると「スーツが正装なのは常識。」ということです。

スーツの歴史は後ほど少し触れますが、19世紀頃から貴族など位の高い人が着る服という位置付けでした。位の高い人は、常にそれなりの式典などに顔を出すため、正式な場、礼節を重んじる場での装いがスーツを着る慣習として現代にも残りました。

「慣習なんて面倒なものなくせばいいのに……。」と考える人もいるとは思いますが、スーツに限らず文化的に根付いている慣習の縛りはなかなかなくなりません。

たとえば、日本の慣習として存在する年賀状、お中元、お歳暮などです。また、法要も正式な慣習に従うと、初七日、四十九日、百か日、初盆、お彼岸、一周忌、三回忌、十三回忌、十七回忌、二十三回忌、二十七回忌、三十三回忌まであり、それぞれに正式なルールがあるためちょっとやりすぎな気がします……なくなることはないですね。

というわけで、仕事も礼節を重んじる場としてスーツを着ることが当たり前の慣習になっています。

もちろん、アメリカなど一部の国では機能性を重視した仕事のスタイルがある程度浸透しているとは聞きますが、アッパークラスが未だにスーツを着続けていることは間違いありません。

スーツを着る理由2.元々が軍服だったため

スーツは元々軍服から派生したもの、つまり兵士の統制をとるためのユニフォームだったわけです。

スーツの元になったフロックコートは15世紀にイギリスで生まれたものです。当時は軍服として使用され、防寒対策として襟が高く丈夫に作られていました(イギリスは夏場でも平均が20℃を超えるくらい)。その後フロックコートは、軍服から派生して貴族のコートとして普及しました。

スーツが現在の形になったのはイギリス帝国ヴィクトリア朝の1850-1860年ごろで、それまで主流で堅苦しかったフロックコートやモーニングから徐々にカジュアルなラウンジスーツ(現在の意味におけるビジネススーツ)に変化し、好まれるようになっていきました。

引用|デキる男の服装とは?スーツを着こなすため必要な内面の要素

ユニフォームなどで服装を揃えることは、コンセプトに根ざした集団の規律を作り、全体統制を取るための基本です。

現在は、もちろん当時のヨーロッパのように多くの戦争・騒乱はありません。その代わり仕事の場は当時の戦争よろしくコンセプトに根ざした集団の統制が必要な場と考えられます。

つまり、スーツはお手軽なユニフォームと位置付けられているということですね。

スーツを着る理由3.身分の違いを明らかにするため

「仕事でスーツを着るのはマナーだ。」「ある程度の年齢になったら良いスーツを着なければいけない。」という人がいます。スーツを着るためには、ある程度のお金とマナーが必要です。

前述した通り、スーツ(フロックコートなど)は元々貴族など位が高い人が着ていました。これはスーツを着ることで、身分の違いを明らかにするためです。

日本に住んでいると想像できませんが、欧米、とくにスーツ発祥のイギリスは階級社会です。階級によって仕事や服装だけでなく、使う英語の発音さえも異なります。

たとえばサッカーのスーパースター「ベッカム」は、ワーキングクラス(いわゆる労働者階級)特有の訛りを話すため、一部の中・上流階級層から馬鹿にされていました。また、1990年代に登場したロックバンドでワーキングクラスの「オアシス」とアッパーミドル(中上流階級)の「ブラー」は、階級層の違いから常に対立が注目されました。

イギリスでは「ワーキングクラスが成功するためには、サッカー選手かミュージシャンになるしかない。」と揶揄されるくらい、階級意識が根強いのです。ここで言う成功とはお金などのことで、潜在的な階級とは別物です。

そんなイギリスでは貴族が着るスーツは権威の象徴であり、階級の違いを明確にする服装とマナーを厳格に決める必要がありました。今でもマナーの多くは権威の象徴の名残です。「紳士の嗜み」とは、本来ミドル・アッパークラスのみに該当するわけですね(アッパーは1%未満、ミドルは2割ほどだそう)。

イギリスだけでなく人間社会ではいつの時代も身分の違いがあり、その違いをシンボル化するために金銭やマナーというハードルを設けて、明確な形にしてきました。

そのため、もしスーツがなくなったとしても代わりの衣服は出てくるでしょうし、身分の違いを表すシンボルも作られるでしょう。そして、それが「正式には~」という前提が付いたマナーになることも変わらないでしょう。

スーツの必要性

スーツが慣習的・規律的になくならないものだとしても、スーツを着ることにメリットを感じている人もいます。では、彼らは何に対してメリットを感じているのでしょうか。

冒頭のマイナビの調査、および一般論としてざっと挙げると以下のものが考えられます。

  • 仕事とプライベートとのメリハリがつく
  • 制服のようで気が引き締まる
  • 見た目が良ければ、悪い印象を持たれない
  • 仕事ができるように見える
  • スーツの方がかっこよく感じる
  • 選ばなくていいから私服より楽

たしかに、デスクワークを家に持ち帰っても進みが遅いように、仕事とプライベートのメリハリが付いたり、気が引き締まることはスーツを着るメリットですね。

目上の人に会う機会が多い営業職の人も、スーツを着ていないより着ている方が悪い印象は持たれにくいでしょう。そして何よりも、私服の方がお金がかかったり、バリエーションに気を使うという人もいるはずです。

個人的なスーツを着る理由

わたし個人は、「仕事のときはスーツを着るべきだ!」という意見には賛成ではありません。最大のパフォーマンスを出せる服装がスーツであれば着るべきだし、そうでなければ着ない方が良いと思います。

働く社員の仕事のパフォーマンスを推し量るのは経営者です。そのため、スーツでブーブー不満が出る職場は統制を採ることができておらず、経営者の能力が足りないということになります。

ちなみに、わたしは仕事柄「スーツを着ること=商品を見せる看板」という立場のため必ずスーツを着ますが、もちろん嫌々着ているわけではありません。仕事をする前からスーツに興味があったため、仕事的にも個人的にもスーツを着るメリットの方が大きいのです。

とは言え、夏の暑い日はノータイスタイル(センツァクラヴァッタ)を意識しますし、オフの日はジャケットを着るよりもカジュアルスタイルの方が多くなります。

「じゃあなぜお前はスーツをすすめるんだ?」と問われれば、「え?だって、スーツ着こなすとかっこいいじゃん。」と答えます。

スーツはシチュエーションに応じたマナーが存在するため、たしかに面倒な部分もあります。ただ、スーツの着こなしは百年以上の時間で洗練された結果、フォーマルシーンやビジネスシーンでの地位を築いています。

そのため、マナーを守ってスーツを着こなしている人を見ると単純にスマートでかっこいいと感じますし、わたし自身よりスマートに着こなしたいと考えます。

というわけでわたしがスーツに関わっているのは、仕事以上に趣味の側面が大きかったりします。もちろんスーツを着ているときは、「できる限りスマートに……。」とかっこつけながら着てますよ。

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Be a man dressing to suit.