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転職活動のスーツの着こなしは?
みなさんは、今働いている会社からの転職を考えたことはありますか?
厚生労働省が行った「平成28年雇用動向調査」によると、1年間の転職入職者数はおよそ480万人、割合は9.9%(一般労働者8.0%、パートタイム労働者15.5%)となっています。欧米に比べて雇用の流動性が緩やかと言われる日本でも、毎年10人に1人は転職しているようです。
平成28年1年間の入職者数を職歴別にみると、転職入職者数は4,778.0千人(前年5,028.1千人)で、転職入職率が9.9%(同10.6%)、未就業入職者数は2,898.7千人(同2,721.1千人)、未就業入職者数のうち、新規学卒者は 1,345.0 千人(同 1,249.9 千人)で、未就業入職率が 6.0%(同5.7%)となっている。
つまり、今の会社で一生働きたいと思っている人も、いつ転職を真剣に考える環境に変わるかわからないということです。
そんな転職活動では、面接に際して「自由な服装でお越しください。」と言われる場合があります。
すでに社会人を経験しているあなたは、企業が特定の服装を推奨していない限り、スーツで訪問することが望ましいとわかりますね。そこで気になることが1つ。
「今の職場じゃスーツ着ないから、3年前に着たリクルートスーツしか持ってないんだよなぁ。別に問題ないよね?」
さて、転職活動におけるこの認識は合っているのでしょうか。それとも、転職活動で着るべきスーツに注意点はあるのでしょうか。
今回は、転職活動のスーツの着こなしやマナー、また学生の就職活動との違いについてお話します。
就職活動と転職活動のもっとも大きな違い
学生の就職活動にしろ、社会人の転職活動にしろ、企業の求人募集に応募して面接を受け、合否の判断をもらう過程に大きな違いはありません。
ただし、求職者側には違いがあります。それは求職者が社会人として働いた経験があるかないかです。社会人であれば、社会未経験の新入社員があらゆる面で大目に見てもらえることはよく知っていますね。
ところが就活生とは違い、転職者は社会経験を積んで、社会人としての常識を持っていて当たり前だとみなされます。また就職活動は、学生の就職活動よりも人数が少ないため、企業から十分な吟味もされます。
そのため、面接官はより厳しい目線で、必要十分なスキル以外に常識的なマナーや服装などもチェックします。
では、「以前に着ていたリクルートスーツでも良いか?」ですが、就職活動において、社会人としてのスーツのマナーを考慮したリクルートスーツを選んでいた人であれば問題ないでしょう。
具体的にどのようなスーツであれば問題ないのでしょうか。
転職活動時のスーツの基本的な着こなし
転職活動で着るスーツや着こなしのマナーがリクルートスーツとどれくらい変わるのか、学生の就職活動と同じ項目で比較してみます。
参考|就活の面接で失敗しないスーツの正しい着こなしと基本的なマナー
着こなし1.スーツの色・柄・生地など
リクルートスーツの色はダークネイビー、ダークグレー、(ブラック)、柄は無地がメイン、生地は価格によりますが定価4-5万円のスーツを割引で2-3万円台で買えるくらい(ウールにポリエステル混の化繊)がベターです。
ただし、ビジネスの場でブラックはNGです。黒は礼服の色であり、とりわけブラックスーツは葬儀に着用するイメージがあります。そのため、リクルートスーツがブラックの場合は、ダークネイビーやダークグレーに変えなければいけません。
着こなし2.ジャケットのシルエット
転職サイトのDODAによると、転職を考える年齢は平均30歳前後だそうです。スーツのシルエットに変化があることを考えると、10年近く前のリクルートスーツはありか、なしか……。
時代によるディテールの変化はありますが、リクルートスーツがレギュラーな英国調で、全体的に細身、またはストレートというシルエットは10-20年ほど変わっていません。そのため、スーツ自体のシルエットは問題ないはずです。
問題は、スーツが身体に合っているかどうかです。スーツがパツパツでシワが寄っていると清潔感が薄れますし、余裕がない雰囲気に見えます。そのため、体型が合わなければ変えるしかありません。
着こなし3.ジャケットのボタンの数
ジャケットのボタンの数も前項と同様です。今の日本の主流は2つボタンスーツですが、仮に段返り3つボタンスーツでも見た目の問題はありませんし、段返りなしの3つボタンスーツだとしても、中1つ掛けで対応すれば良いでしょう。
参考|段返り3つボタンとは?2つボタン・3つボタンスーツの違いは?
着こなし4.フロントボタンの1番下は外す
ジャケットのアンボタンマナーも共通したマナーなので、とくに気にする必要はありません。ナチュラルウエストを意識してボタンを留め、寄りシワを作らないようにしてください。
参考|2つボタン3つボタンスーツでマナーが違う?1番下を開ける理由
着こなし5.フラップはポケットに入れる
フラップポケットのフラップの出し入れ(屋外でフラップを出し、屋内でしまう)も共通マナーです。
ただ、就活生のときは最悪入れっぱなしで良いとしたフラップですが、社会を経験したらマナーに沿った出し入れをする方がスマートです(最近は英国でもそこまで厳格ではないようですが)。
参考|スーツのフラップポケットとは?フタがある理由と使い方のマナー
着こなし6.ポケットに財布やスマホは入れない
スーツのポケットに物を入れない方が、だらしなく見えないことは常識です。こちらも「きれいなシルエットを作ること」「シワを作らないこと」をもとにしたスーツスタイルのマナーなので、基本は変わりません。
財布やスマホなどを持ち歩く際は、ビジネスバッグを使ってください。いくら社会人に慣れた人でも、クラッチバッグで転職活動をしないよう。
参考|スーツのポケットに何も入れないのは本当?財布やスマホの持ち運び方
着こなし7.パンツのシルエット
パンツのシルエットも基本はストレート、または軽いテーパードですね。こちらもリクルートスーツと変わりません。プリーツ(タック)も必要に応じて入っていれば良いと思います。
参考|タック・プリーツ・ダーツの違いは?ワンタックパンツはダサい?
ワイシャツの基本的な着こなし
着こなし1.シャツの色・柄・生地など
ワイシャツのベースカラーは白、またはブルー・ピンクなどのペールトーンで、悪目立ちしなければ好みや転職先の業界色を取り入れる工夫をしても良いでしょう。
スーツが無地なら、シャツはストライプ・チェック柄などを使ってもカジュアル過ぎることはありません。
着こなし2.シャツのカラー
ワイシャツのカラーもレギュラー、ワイド、ショートポイントなど、全体のバランスを考えて使い分ければ良いでしょう。就職活動時のように細かく気にする必要はありません。
ただし、「ボタンダウンシャツ=カジュアル」と考える面接官はいるかもしれないため、業界によっては控えた方が無難です。
着こなし3.ジャケット袖口・襟口とシャツ出し
ジャケットの袖口や襟口からシャツが見える着こなしも基本的なことで、変わりはありません。
シャツを着て腕を自然におろした状態で袖口から1-1.5cm、襟口から1.5cmほどシャツが見えるのが一般的です。20年ほど前は5cm以上の襟高のシャツが流行りましたが、首が苦しそうに見えるのはNGです。
その他の基本的な着こなし
着こなし1.ネクタイの色・柄・生地など
せっかく社会人になったんだからと、スーツの色柄にこだわる人がいますが、スーツは基本的に無地のダークカラーでシャツやネクタイの色柄にこだわった方がコーディネートは難しくありません。王道に勝るものなしです。
参考|ビジネススーツを着こなしたい!絶対失敗しない王道の色使いとは
ネクタイの色はリクルートスタイルと同じでネイビーが基本、プラスでエンジ、ダークグレー、ブラウン、ベージュ、ブルーなど、柄は無地、レジメンタル、小紋、生地はシルク一択です。
注意点としては、スーツ、シャツ、ネクタイで目立った柄を2つ以上使わないこと。スーツの着こなしの基本(Vゾーンの基本)に、「2無地1柄(2plain, 1pattern)」という考え方があります。
これはマナーではありませんが、2つ以上の柄「チェック柄×ストライプ柄」「チェック柄×チェック柄」などは着こなしがくどくなります。このあたりはまた別途お話します。
着こなし2.ディンプルによるメリハリ
社会人を経験しているなら、きれいなディンプルは作れますよね。ディンプルはネクタイを解けにくくするだけでなく、くぼみによる陰影が立体感と質感を強調して、首元に華やかさを出す効果があります。
「ネクタイが細いから作れないんだけど。」という人は、大剣が8-9cmのネクタイに変えましょう。ビジネスシーンでは以前よりもナロータイは使われなくなっています。
また、葬儀ではディンプルを作らないというマナーから、転職活動でも作らなくて良いという人がいます。たしかにディンプルは華やかさの演出ですが、社会人経験者としての着こなしをアピールするには費用対効果が高いポイントだと思います。
参考|ディンプルの意味や種類は?作りやすいネクタイと崩れにくい作り方
着こなし3.ネクタイはベルトに触れる長さ
ネクタイの長さも基本は変わらず、大剣がベルトに触れるくらいの長さにすることです。
ただしこれはバランスのお話です。若者でたまに見かけるパンツの腰履きでは、ネクタイは必然的に長くなります。ネクタイの長さが妥当でも、ベルトにかかっていなければ適度に隠すという目的が果たせません。
着こなし4.ベルトと靴は黒
こちらも基本は変わらず、ベルトと靴の色は黒が無難です。ただ、最近までロングノーズで先が尖ったイタリア靴が流行っていましたが、これらは明るい茶系が多いですね。
もちろん、明るい茶系でも問題ない職場はたくさんあると思いますが、それならせめてベルトの色も合わせましょう。そして、靴やベルトだけ浮かないように、スーツの色も明るめにしましょう。
そう考えると、ベルトと靴がコーディネートに与える影響は大きいことがわかると思います。ただし、どちらにしても転職活動で明るすぎる雰囲気は、悪目立ちの原因になってしまいます。
着こなし5.ベルトは無地の革製
こちらはとくに言うことはなく、黒無地の革製がもっとも使い勝手が良いと思います。
着こなし6.靴下は黒のロングホーズ
革靴が黒なら、靴下も黒のロングホーズ……こちらもこれ以上言うことはありません。
参考|スーツに合わせるロングホーズとは?靴下の長さの種類と名称
着こなし7.靴はストレートチップ・プレーントゥ
靴もストレートチップやプレーントゥが基本なので、とくに変える必要はありません。それよりも注意点は汚れや傷です。
就職活動で買った革靴も2-3年履いていれば、ソールの減りや革の傷が目立ちます。せっかくスーツを清潔に着こなしていても、靴の汚れや傷が目立つと台無しです。
駅前やショッピングモールにある修理屋に持っていけば、ソール減りの単純な補修で3000円、細かいキズ補修や靴磨きは1000-2000円ほどなので、気になる人は利用してください。
スーツの着こなしは相手がどう思うか
いくら社会人経験があり、企業が求める能力を持っていても、転職活動の服装に清潔感や協調性が必要なことは就職活動のときと変わりません。
反対に、社会人経験があるため、それまでの職場の雰囲気に流されてなぁなぁな服装を良しと思いこんでいる可能性もあります。
とくに気をつけたいのは「クールビズ」の概念ですね。日本特有のクールビズには、明確なマナーの定めはありません。そのため、ノータイ、ノージャケットだけでなく、半袖シャツ、チノパン、ポロシャツ、アロハシャツ、スニーカーなどをクールビズとする企業もあります。
クールビズ自体は問題ないのですが、本来はどうのようなスーツスタイルが正しく、クールビズで何が許されているのかを理解していない人が大勢います。
参考|クールビズがおしゃれにならない原因は?スーツの間違った着こなし
そんな曖昧なクールビズ文化に慣れた社会人が、いざ転職の面接で「クールビズでお越しください。」と言われたら、何を基準に服装を決めれば良いのかわからなくなります。
その場合は、クールビズという概念は一旦リセットして、真夏でもビジネスマンとして十分にふさわしい服装で企業を訪問するしかありません。
こればかりは正しい・間違っているの話ではなく、目的が転職で、それを判断する面接官がどう思うかですからね。